2024年8月4日(日)

BBC News

2024年8月4日

パリ・オリンピック(五輪)のボクシング女子で3日、アルジェリア代表のイマネ・ケリフ選手(25)が66キロ級でメダル獲得を確実にした。3回戦(準々決勝)でハンガリー代表のハモリ・アンナルツァ選手(23)に対して全3ラウンドを戦った後、全ジャッジ一致の判定で勝利した。ケリフ選手の性別をめぐる適性資格が、議論や憶測の対象になっていた。

勝利してメダル獲得を確実にしたケリフ選手は感情を抑えきれない様子で、「うれしいです」とBBCのダン・ローアン記者に話した。

「アルジェリアにとって、女子ボクシングで初のメダルになる。とてもうれしいです。全世界とアラブ世界に感謝したい。本当にありがとうございます」と、ケリフ選手は話した。

対戦相手のハモリ選手は試合前、ケリフ選手が女子カテゴリーに参加していることは「公平だとは思わない」とコメントしていたものの、実際の試合では二人とも前向きに戦った。ゴングが鳴ると両選手とも抱き合い、判定結果が出た後も、お互いを抱きしめた。

「お互いにとってとても厳しい1日だったけれども、素晴らしい試合だったとだけ言いたいし、ケリフにはこれからもがんばって、本当にありがとうと言いたい」とハモリ選手はコメントした。

入場時に観衆からブーイングされたハモリ選手は、今も不公平な試合だったと思うかという質問には、「気にしていない」と答えた。

ケリフ選手は6日の準決勝で、タイ代表のチャンチェーム・スワンナーペン選手(23)と対戦する。スワンナーペン選手は準々決勝で、2021年の東京五輪で優勝したトルコ代表のブセナズ・シュルメネリ選手(26)に勝利して、準決勝に進んだ。

ボクシングは3位決定戦がないため、ケリフ選手は、仮に準決勝で敗れても銅メダルは手にすることになる。

この日の試合から間もなく、アルジェリアのアブデルマジド・テブン大統領はソーシャルメディアで、「あなたはアルジェリアと、アルジェリアの女性と、アルジェリアのボクシングに栄誉を与えた」とケリフ選手をたたえた。さらに、「この先の結果がどうだろうと、私たちはあなたを支える。次の2試合で勝ち進められるよう、幸運を祈ります」と書いた。

「ばかげた」騒ぎとアルジェリア委

アルジェリア・オリンピック委員会のヤシネ・アラブ氏は、ケリフ選手の適性をめぐる騒ぎは「ばかげている」と一蹴した。

ケリフ選手は、昨年の女子ボクシング世界選手権で、国際ボクシング協会(IBA)の資格基準を満たせず、失格となった2選手のうちの1人。2回戦で対戦したイタリアの選手が試合開始46秒で危険したことなどから、ケリフ選手の女子カテゴリーへの参加が物議を醸し、国際オリンピック委員会(IOC)が同選手には出場権があると擁護する事態になっている。

IOCは、昨年の世界選手権でウェルター級のケリフ選手が失格となったのは、男性ホルモンの一種であるテストステロンの上昇によるものだったと述べた。ケリフ選手は、2021年の東京五輪にも出場している。

ロシアが主導するIBAは2023年の世界選手権で、ケリフ選手と台湾の林郁婷選手が「IBAの規定で定められた女子競技会への参加資格を満たしていないと発表。ケリフ選手は失格となり、林郁選手は銅メダルを剥奪(はくだつ)された。

IBAのロバーツ会長は1日、BBCのダン・ローアン・スポーツ担当編集長とのインタビューで、XY染色体が(ケリフ選手と林選手の)「両方のケース」で確認されたと発言。「異なる染色糸が関わっている」ためIBAはケリフ選手を「生物学的に男性」だと言うことはできないとした。

IOCは、IBAの検査の正確性に疑問を呈している。

「このアルジェリア人ボクサー(ケリフ選手)は「女性として生まれ、女性として登録され、女性として人生を送り、女性としてボクシングをし、女性のパスポートを持っている」と、ICOのマーク・アダムズ報道官は2日に述べた。

IOCのトーマス・バッハ会長も3日、ケリフ、林両選手が女性だということに「何の疑いもない」と言明した。

IBAは同日、両選手を失格とした理由について「詳細に説明」するため5日に記者会見を開くと明らかにした。

性分化疾患(DSD)によってテストステロンの血中濃度が高いケースに、ケリフ選手が該当するのではないかとの意見もある。DSDは、女子800メートルで2012年ロンドン五輪、2016年リオデジャネイロ五輪を制したキャスター・セメンヤ(南アフリカ)の事例を通じて、広く知られるようになった。

これについてアラブ氏は3日の試合前にBBCのローアン記者に対して、「(ケリフ選手が)選手村に到着した時点で、検査を受けている」と話した。

「もし陽性だったら、組織委が彼女の出場を認めたと思いますか? 絶対にありえない。彼女はあらゆる検査を受けた。妊娠検査さえ受けた。すべて陰性だった」とアラブ氏は言い、「(IBAは)彼女のテストステロン濃度が非常に高い、だから陽性だと判定した。しかしIOCの医療責任者は、ボクシング選手のテストステロン濃度が高いのは実際、普通のことだと判断した。どの女子選手もそうで、イマネだけのことではない」と説明した。

「この騒ぎはばかげている。イマネが女の子として生まれたのは、だれでも知っている。これまでずっと女子として戦ってきた。ずっと女子として試合に出てきた。彼女が負けている間は、誰もこんなこと話題にしなかった」と

(英語記事 Eligibility-row boxer Khelif secures Paris medal

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clwyyqnglnwo


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