テニス男子のセルビアのノヴァク・ジョコヴィッチ（37）が4日、パリ・オリンピック（五輪）のシングルス決勝で、スペインのカルロス・アルカラス（21）を破り、初の金メダルを獲得した。これにより、生涯での「ゴールデンスラム」を達成した。
ジョコヴィッチは、グランドスラム（4大大会）で男子史上最多の通算24勝を挙げるなど、テニスのあらゆるタイトルを手にしてきた。しかし、五輪はこれまで4度出場しながら、金メダルを手に入れることはできなかった。
5度目の挑戦でジョコヴィッチは、今年の全仏オープンとウィンブルドンを制したアルカラスと決勝で対戦。今年最高のプレーを見せ、7-6（7-3）、7-6（7-2）で勝利した。
これでジョコヴィッチは、4大大会すべてと五輪で優勝する「ゴールデン・スラム」をシングルスで達成した5人目となった。ほかの4人は、スペインのラファエル・ナダル、アメリカのセリーナ・ウィリアムズ、アンドレ・アガシ、ドイツのシュテフィ・グラフ。
歓喜の瞬間
ジョコヴィッチはこの試合、3時間近い熱戦の末にマッチポイントを迎えた。フォアハンドを強打してウィナーを奪うと、自分の関係者がいる観客席に向き直り、信じられないといった様子で両手を広げた。左手に持っていたラケットは、ローラン・ギャロスの赤土の上にぽとりと落ちた。
ジョコヴィッチはアルカラスと抱き合うと、涙を流しながらコート中央で両膝をついた。セルビア国旗を広げ、観客席によじ登ると、家族やチームと喜び合った。
ジョコヴィッチはその後、「優勝したあの瞬間に感じたことは、こうだろうと自分で思ったり期待したりしていたすべてを、上回った」と述べた。
そして、「セルビアの国旗を掲げ、セルビアの国歌を歌いながら、金メダルを首にかけて、あのコートにいる。これに勝るものはプロスポーツにはないと思う」と説明。
「間違いなく自分のこれまでの業績の中で、ずば抜けて最大のものだ」と話した。
五輪初出場で銀メダルを獲得したアルカラスも、試合後は涙を流した。
銅メダルは、3位決定戦でカナダのフェリックス・オジェ＝アリアシムを破った、イタリアのロレンツォ・ムゼッティが勝ち取った。
見事な勝利で偉業達成
ジョコヴィッチにとってこの勝利の瞬間は、これまで勝ったグランドスラム、マスターズ1000タイトル、ATPトーナメントのすべてと同じか、それ以上の意味を持つといえる。
つい2カ月前には、このローラン・ギャロスで全仏オープンを戦ったが、膝の手術が必要となり準々決勝を棄権。五輪優勝の夢は危ぶまれていた。
この日、ジョコヴィッチの家族は、観客席でセルビアの国旗を掲げながら試合を見守っていた。娘のタラさんは「パパは最高」と書いたものを手にしていた。
ジョコヴィッチはこれまで、オリンピックこそがスポーツの最高峰だとの考えを表明していた。過去4大会では国を代表するという感情に影響を受けてきたと話していた。
2008年北京五輪ではシングルスで銅メダル、2012年ロンドン五輪では4位だった。2016年リオデジャネイロ五輪では早々と敗退。3年前の東京五輪では準決勝で負け、銅メダル争いにも敗れた。
しかし今大会は、最初から集中し、1セットも落とさず勝ち進んだ。長い間逃してきた金メダルを絶対に取るという、強いを思いをうかがわせた。
この日の決勝でも、ジョコヴィッチは第1セットで、アルカラスにブレークポイントを8ポイント握られたが、すべてしのいだ。そして、両セットともタイブレークでアルカラスのわずかなすきを突いて勝利した。
ジョコヴィッチは試合後、テニスを「完成させた」かと聞かれると、「イエスだ。この金メダルですべての業績を完成させたので。でもノーだ。私はこのスポーツを愛しているので。大会に勝つためだけにプレーしているわけではないから」と答えた。
「将来のことはわからない。今この瞬間は喜びを味わっていたい。金メダルを手にするまでの道のりは長くて、何年も何年も夢見ていた。だから、今は幸せと喜びと祝福の時だ」
ジョコヴィッチにとって、今シーズンは困難が続いた。全豪オープンは準決勝でイタリアのヤニク・シナーに敗退。全仏では膝を負傷して手術が必要となり、ウィンブルドンでは今季初めて決勝まで進んだものの完敗を喫した。
しかし、失速の兆しなどないジョコヴィッチにとっては、苦しんだからこそ、五輪金メダル獲得の喜びがいっそう増した。2028年ロサンゼルス五輪への出場も、ジョコヴィッチは否定していない。
ロシアの中立選手が今大会初メダル
この日、女子ダブルス決勝もあり、イタリアのジャスミン・パオリーニとサラ・エラーニのペアが、個人の中立選手（AIN）として出場したミラ・アンドレエワ、ディアナ・シナイジェルのロシア人ペアを破り、金メダルを手にした。
アンドレエワとシナイジェルは銀メダルを獲得。今大会でメダルを取った最初のロシア人選手となった。
（英語記事 Djokovic beats Alcaraz to win long-awaited Olympic gold）
