2024年10月10日(木)

JAPANESE, BE AMBITIOUS!米国から親愛なる日本へ

2024年8月13日

学長室に飾られているジャンパー。空母への着艦回数が書かれたワッペンが貼られている(WEDGE)

 海軍での経験を大学の運営にどう役立てようとしているのだろうか。

 「海軍時代、高性能ジェット機6機を6インチ(約15センチメートル)間隔、時速500マイル(約800キロメートル)で45分間飛行させたことがありますが、事故は起きませんでした。こうしたミッションの実現には、絶え間のない修練や努力を行う人材を育成する教育や標準化が必要です。もう一つは、ミッションの目的を人々に示して、賛同を得ることです。ミッション達成には協力的な精神がメンバーの間に存在することが不可欠です。海軍時代のこうした経験を大学運営に生かしていきたい」

オハイオ州を
〝シリコン・ハートランド〟に

 現在、オハイオ州立大学の外国人留学生の内訳を見ると、中国人が約3200人に対して日本人が約40人である。「オハイオ州立大学では全学生の10%が留学生です。大学同士の交換留学制度があり、20近くの留学制度もあります。これは日本の学生が短期間で有意義に学べる制度です」と、日本人留学生がさらに増えることへの期待感を示した。日本企業との関係では「ホンダとは20年以上のパートナーシップを築いてきており、これまでオハイオ州立大学に多額の寄付を行ってくれています。この成果には注目していて、EV(電気自動車)のバッテリーの開発と将来の成長が楽しみ」と述べた。

 テクノロジーに関しては、「半導体大手インテルのパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)と連携して、オハイオ州の中部地域に新しいテクノロジーのハブを作ることを目指しています。私たちは他大学とともに、労働力のパイプラインを育成しています。また、シリコンバレーと競争関係にあるのではなく、オハイオ州にはサンフランシスコやニューヨークにはない特色がある。例えば、豊富な水資源や比較的安価な電力、広大な(新たな)土地などの利点もあります」と話し、半導体の〝シリコン・ハートランド〟にしていきたい思いを持っているようだ。

 最後に今後の日米関係の深化や連携についてはこう語った。

 「日米同盟を基軸としたパートナーシップは非常に強く、日本の自衛隊と何度も一緒に活動してきました。しかも、私が日本にいた1980年から90年代に比べて、日米間の結びつきは確実に強くなっている。私たちにはもっとできること、やるべきことがあります」

 では、カーター氏をオハイオ州立大学に招いた日本人とは一体誰なのか。

後編(2024年8月14日公開)へ続く

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Wedge 2024年8月号より
JAPANESE, BE AMBITIOUS! 米国から親愛なる日本へ
JAPANESE, BE AMBITIOUS! 米国から親愛なる日本へ

コロナ禍が明けて以降、米国社会で活躍し、一時帰国した日本人にお会いする機会が増える中、決まって言われることがあった。 それは「アメリカのことは日本の報道だけでは分かりません」、「アメリカで起こっていることを皆さんの目で直接見てください」ということだ。 小誌取材班は今回、5年ぶりに米国横断取材を行い、20人以上の日本人、米国の大学で教鞭を執る研究者らに取材する機会を得た。 大学の研究者の見解に共通していたのは「日本社会、企業、日本人にはそれぞれ強みがあり、それを簡単に捨て去るべきではない」、「米国流がすべてではない」ということであった。 確かに、米国は魅力的な国であり、世界の人々を引き付ける力がある。かつて司馬遼太郎は『アメリカ素描』(新潮文庫)の中で、「諸民族の多様な感覚群がアメリカ国内において幾層もの濾過装置を経て(中略)そこで認められた価値が、そのまま多民族の地球上に普及する」と述べた。多民族国家の中で磨かれたものは、多くの市民権を得て、世界中に広まるということだ――


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