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ウクライナは14日、自軍がロシア領内で前進を続けており、複数の方向へと動いていると発表した。
ロシア西部の国境地帯にあるクルスク州は6日、ウクライナ軍の突然の越境攻撃を受け、ロシア当局が同州に非常事態を宣言した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ部隊は14日朝からクルスク州で1~2キロメートル前進したほか、ロシア兵100人を捕らえたという。しかしロシア側は、ウクライナ部隊のさらなる前進を阻止したと主張している。
ウクライナの越境攻撃は2週目に突入している。ウクライナがロシア領内にここまで深く侵入したのは、2022年にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以降で初めて。
ウクライナとロシア、相反する主張
実際にどれくらいのロシア領土をウクライナが占拠したのかは不明で、両国は相反する声明を出している。
ロシア・チェチェン共和国の特殊部隊「アクマット」の司令官アプティ・アラウディノフ少将はロシア国営テレビ「チャンネル1」で、ロシア部隊はウクライナ軍の前進をほぼ「完全に阻止した」と語った。
一方で、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官はビデオリンクで、ウクライナ部隊が現在、クルスク州境の町スジャを完全に制圧していると、ゼレンスキー大統領に伝えた。
BBCはこの主張が事実かどうか、独自に検証できていないが、ウクライナのテレビ局がスジャで撮影した動画には、ウクライナ兵が学校からロシア国旗を撤去する様子が映っていた。
ウクライナ、ロシア側に「安全地帯」設置も
ウクライナがロシア領の一部を占拠したと主張するなか、ウクライナ外務省のヘオルヒ・ティキヒ報道官は、同国はロシア領を「奪う」ことに興味はないと述べた。
「ロシアが公正な平和の回復により早期に合意すれば(中略)ウクライナ国防軍によるロシア領内への襲撃も早期に止まるだろう」と、同報道官は記者団に述べた。
ゼレンスキー氏は先の政府関係者との会談で、ロシア・クルスク州に「軍司令官の事務所」を設置することを検討するつもりだと述べた。
ウクライナのイリナ・ヴェレシュチュク副首相は14日、自国の国境を守るためにクルスク州に「安全地帯」を設けるという計画の概要を述べた。
ウクライナは安全地帯の中でロシア市民のための人道支援を組織し、ロシアとウクライナ双方への避難回廊を設けるつもりだと、副首相はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。
ロシア側の状況は
ロシアのリベラル系野党「ヤブロコ」所属の地方当局者ヤン・フルツェフ氏は、クルスク州は「緊迫した」状況に置かれていると述べた。
「自宅を離れようとしている市民は非常に難しい心理状況にある」、市民は多くの「ストレスと悲しみ」を受けていると、フルツェフ氏はBBCラジオ4の番組「ザ・ワールド・トゥナイト」に語った。
フルツェフ氏によると、約18万人の市民が避難を必要としている。これまでに12万1000人が避難しているという。市民は食料や資料品など基本的な必需品を求めていると、同氏は述べた。
ロシアは先に、ドローン(無人機)攻撃や砲撃で複数の家屋が損壊している、クルスク州に隣接するベルゴロド州に2度目の非常事態を宣言した。
ロシア政府は、主にクルスク、ヴォロネジ、ベルゴロド、ニジニ・ノヴゴロドの4州を標的とした117機のドローンを、一晩で撃墜したと主張している。
ウクライナの治安当局がAFP通信に語ったところによると、複数の長距離ドローンはヴォロネジやクルスク、サヴァスレイカ、ボリソグレブスクのロシアの飛行場にも撃ち込まれた。
ウクライナ軍は、特別に計画された作戦で一晩中、飛行場で「楽しい」夜を過ごしたと、治安当局筋の言葉を引用した。
各国の反応
アメリカのジョー・バイデン大統領は13日に、ウクライナ軍の越境攻撃について初めて言及した際、この攻撃はロシア大統領の「プーチン氏にとってまさにジレンマを生み出している」と述べた。
こうした中、欧州のさまざまな支援国がウクライナへの支持を表明している。
フィンランドとエストニアの首相は、クルスク州でのウクライナの軍事作戦を支持すると述べた。ラトヴィアの外相は、ウクライナ政府にはロシア領内で北大西洋条約機構(NATO)供与の武器を使用する「権利がある」と、一歩踏み込んだ発言をした。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は以前、こうした行為は「レッドライン」(越えてはならない一線)だと述べていた。
ドイツ外務省は先週、ウクライナの自衛権は「自国の領土に限定されない」としていた。