2024年8月15日(木)

BBC News

2024年8月15日

ヴィクトリア・ギル科学担当編集委員

火星の岩だらけの表面の奥深くに、液体の水が蓄えられていることが、アメリカ科学アカデミー紀要で発表された研究によって明らかになった。

この発見は、2018年に火星に着陸した米航空宇宙局(NASA)の探査機「インサイト」のデータを新たに分析したもの。

インサイトの着陸機には地震計が搭載されており、火星の奥深くから4年分の振動(火星の地震)を記録した。

この振動を分析し、火星がどのように動いているかを正確に把握することで、液体の水からの「地震信号」が明らかになった。

火星の両極には凍った水があり、大気中に蒸気がある証拠もあるが、液体の水が発見されたのは今回が初めてだという。

インサイトの科学ミッションは、着陸機が4年間の「火星の鼓動」に静かに耳を傾けた後、2022年12月に終了した。

その間に、インサイトは1319回以上の振動を記録した。

科学者らは、この振動波が広がる速度を測定することで、波動が通過した可能性の高い物質を突き止めた。

この研究に携わった米カリフォルニア大学バークレー校のマイケル・マンガ教授は、「これは実際に、地球上で水を探したり、石油やガスを探したりするのと同じ技術だ」と説明する。

分析の結果、火星の表面から深さ約10~20キロメートルの地点に、液体の水がたまっていることが判明した。

研究を主導したカリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所のヴァシャン・ライト博士は、「火星の水循環を理解することは、気候、表面、内部の進化を理解する上で非常に重要だ」と語った。

マンガ教授は、水は「惑星の進化を形成する上で最も重要な分子」だと付け加えた。また、今回の発見は「火星の水はどこに行ったのか」という大きな疑問に答えるものでもあるとした。

火星表面の水路や波紋の研究から、太古の昔に川や湖があったことがわかっている。

しかし30億年もの間、火星は砂漠だった。

火星が大気を失ったとき、水の一部は宇宙空間に失われた。しかしマンガ教授は、地球では「水の多くは地下にあり、火星でそうではない理由はない」と言う。

インサイトが直接記録できたのは足元の表面からだけだったが、研究者らは火星全域に同じような貯水層があると予想している。もしそうだとすれば、火星には深さ1.5キロ以上の層を形成するのに十分な液体の水があると、研究者らは推定している。

一方で、火星の地下水のありかは、火星植民地化計画を持つ富豪たちにとって良いニュースではないと、科学者らは指摘する。

「地下水は火星の表面から10~20キロの深さに隔離されている」とマンガ教授は説明。「火星で深さ10キロの穴を掘るのは、(イーロン・)マスク氏でも難しいだろう」と述べた。

今回の発見は、火星に生命が存在する証拠を探すための、もう一つの標的を示すものでもある。

「液体の水がなければ生命は存在しない。火星に居住可能な環境があるとすれば、それは地下深くにあるのかもしれない」と、マンガ教授は語った。

(英語記事 Reservoir of liquid water found deep in Martian rocks

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c624zgpjj28o


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