2024年8月15日(木)

BBC News

2024年8月15日

パリ・オリンピック(五輪)のボクシング女子66キロ級で金メダルを獲得したアルジェリア代表のイマネ・ケリフ選手(25)が、インターネット上での中傷についてフランス当局に告訴状を出した。英作家J・K・ローリング氏や米富豪イーロン・マスク氏の名前も訴えの中に含まれているという。

ケリフ選手は台湾の林郁婷(リン・ユティン)選手と共に、昨年の世界選手権で失格とされた。主催の国際ボクシング協会(IBA)が実施したジェンダー適格性資格検査で要件を満たせなかったためと報じられている。

一方、国際オリンピック委員会(IOC)はIBAの判断を批判し、両選手のボクシング女子での五輪参加権を強く擁護した。

ケリフ選手の出場については、イタリア代表のアンジェラ・カリニ選手がケリフ選手との試合を46秒で棄権した後、インターネット上で広く議論された。

パリ検察庁は14日、AFP通信に対し、ケリフ選手の告訴を受け、インターネット上での中傷について捜査を開始したと明らかにした。

ケリフ選手の弁護士、ナビル・ブーディ氏が13日に雑誌「ヴァラエティー」に語ったところによると、マスク氏とローリング氏は、ソーシャルメディア上でのコメントに関して、告訴状に名前が出てくるという。

しかし、フランスのある著名な法律ブロガーは、同国の刑法はフランス国外での外国人に対する行為には適用されないため、2人が起訴される可能性は低いと指摘している。

一方で検察が、フランス国内でメッセージを送った人物を起訴する可能性はある。

ソーシャルメディアのX(旧ツイッター)を保有するマスク氏と、「ハリー・ポッター」シリーズの著者であるローリング氏は、どちらもSNS上でケリフ選手について投稿していた。

ローリング氏は、カリニ選手との試合後のケリフ選手について、「彼は、さっき自分が顔を殴った女性の苦しみを楽しんでいる」と書き込んだ。

マスク氏は、アメリカの元競泳選手ライリー・ゲインズ氏の「男性は女子スポーツには属していない」という投稿を共有した。

BBCニュースは、マスク氏とローリング氏の代理人に連絡を取り、コメントを求めている。

ケリフ選手は世界選手権で失格となった1年後に、同大会でチャンピオンとなった中国の楊柳選手と五輪の決勝戦に臨み、金メダルを獲得した。ケリフ選手は試合後、自分のジェンダー適格性資格をめぐる「攻撃」が、この勝利を「特別な味わい」のあるものにしたと語った。

「私はこの競技に参加するための条件をすべて満たしている。他の女性と同じ女性だ」

「私は女性として生まれ、女性として生き、女性として競ってきた。そこに疑いはない」

ケリフ選手との試合を棄権した翌日、イタリアのカリニ選手は、試合後に握手を拒否したことについて「謝りたい」と語っていた

楊選手は、昨年の世界選手権の決勝でもケリフ選手と対戦する予定だったが、IBAはその数時間前にケリフ選手を失格とした。

IBAは、ケリフ選手と台湾の林選手が「IBAの規定で定められた、女子大会への参加資格を満たしていない」と発表した。

一方、2人の出場を許可したIOCは、IBAの検査に疑問を呈し、IBAを強く批判した。

IBAは五輪中に記者会見を開いたが、説明はまとまりがなく、両選手の失格をめぐる混乱はほとんど解けなかった。IBAのクリス・ロバーツ理事長は、2人が 「染色体検査」を受けたと述べた一方、ウマル・クレムレフ会長は、その検査が男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルを調べるものだと示唆したようだった。

BBCは、IBAの行った検査の内容を特定できていない。

IOCは2019年、ロシアが主導するIBAに運営上の問題や汚職疑惑があるとして、ボクシングの世界統括団体としての地位を剥奪(はくだつ)している。

(英語記事 Rowling and Musk reportedly named in Khelif cyberbullying lawsuit

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cj9l2dnpdrdo


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