2024年12月6日(金)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2024年8月14日

 オリンピックの選手たちの談話は、定型化してきた。最初に「おめでとうございます」といったインタビュアーからの言葉に対して、お礼を述べる。次く質問に答えて、勝負所でどんな心境で戦ったかを語る。

五輪連覇を果たした柔道の阿部一二三選手(中央)は大会前も後もメディアのインタビューに追われた(アフロスポーツ)

 そして、最後に、これがもっとも重要なのだが、「応援してくださったファンの皆さん、ありがとうございます。皆さんの支えがあって、今日、勝つことができました」というように、ファンに感謝の言葉を送って、締めくくるのである。

メディアが求めるもの

 今回のオリンピックでは、10代の選手の活躍が目立った。彼ら、彼女らがマイクに向かって話す機会も多かった。競技を見れば彼らが世界のトップ選手であることは明らかで、他国の選手たちも格別のリスペクトをもって、日本選手のパフォーマンスを見ていた。

 インタビューの受け答えは上手とは言えなかったが、それでもパターンを踏んでいた。失言したり、ファンが機嫌を損ねたりするような発言はなかった。インタビュアーは、時折、ウケ狙いの変則的な質問をしていたが、気の利いた返答ができるはずもなく、巧みにかわすこともなく、少し沈黙が流れることもあったが、それでも無事終わっていた。

 インタビュアーが欲しいのは「定型的回答」ではなく、ニュースになりそうな「名言」である。1992年のバルセロナ競泳競技で、岩崎恭子選手が金メダルを取ったとき、この無名の中学生は「今まで生きてた中で、一番幸せです」と語った。この発言は一世を風靡し、今日まで語り継がれるの名言となった。

 しかし、本人は名言を発する意図などない。この発言をセンセーショナルなものにしたのは、メディアである。


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