2024年8月15日(木)

BBC News

2024年8月15日

世界保健機関(WHO)は14日、アフリカの一部地域で発生しているエムポックス(サル痘)のアウトブレイク(大流行)について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

最初のアウトブレイクはコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)で発生し、少なくとも450人が死亡した。

現在は中央アフリカと東アフリカの一部に拡大している。科学者たちは、新たな亜種が急速に広がっていることや、その致死率の高さを懸念している。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、アフリカ内外で感染がさらに拡大する可能性があり「非常に憂慮すべき」事態だと述べた。

「このアウトブレイクを食い止め、人命を救うには、国際的に協調した対応が不可欠だ」

前日の13日には、アフリカ疾病予防管理センターの科学者たちも公衆衛生上の緊急事態を宣言していた。

同センターのジャン・カセヤ代表は、現在のアウトブレイクを食い止めるために早急な対策を講じなければ、手に負えない状況に陥る恐れがあると警告した。

「この脅威を封じ込め、排除するために、我々は積極的かつ果敢に取り組まなければならない」

「これまでで最も危険な」変異株が拡大

エムポックスは伝染力が強い感染症で、以前はサル痘として知られていた。

性行為や皮膚病変(発疹部位)への接触、ほかの人と近い距離で会話や呼吸をするなどの濃厚接触によって感染する。

インフルエンザのような症状や皮膚病変を引き起こし、致死率は100人に4人と、命に関わることもある。

エムポックスウイルスには大きく分けてクレード1(コンゴ盆地系統群)とクレード2(西アフリカ系統群)の2種類がある。

2022年にWHOが緊急事態を宣言した際のエムポックスの感染拡大は、比較的症状の軽いクレード2によるものだった。

しかし今回は、より致死性の高いクレード1が拡大している。クレード1の過去のアウトブレイクでの致死率は最大10%だった。

ウイルスに変化がみられたのは、昨年9月ごろだった。

変異によりクレード1bと呼ばれる派生型が生まれ、以来急速に感染が広がっている。この変異株は「これまでで最も危険なもの」だと指摘する科学者もいる。

今年に入ってから、コンゴ民主共和国では1万3700人以上が感染し、少なくとも450人が死亡した。

その後、ブルンジや中央アフリカ共和国、ケニア、ルワンダなどほかのアフリカ諸国でも感染が確認されている。

緊急事態宣言は事態の「深刻さ」示すものと

今回、WHOが公衆衛生上の緊急事態を宣言したことで、エムポックスの研究や資金提供、そのほかの国際的な公衆衛生対策の導入が加速することが期待されている。

英保健慈善団体ウェルカム・トラストのジョシー・ゴールディング博士は、「強いシグナル」を送るものだとし、米エモリー大学のボグマ・ティタンジ博士は、今回の動きは「この危機の深刻さを強調している」と述べた。

英オックスフォード大学のグローバル・ヘルス・ネットワーク・ディレクター、トルーディー・ラング教授は、「重要かつタイムリー」な対応だとしつつ、新しい変異株の出現は、「対処すべき未知のものが数多く」存在することを意味すると付け加えた。

2022年7月には、より症状の軽いクレード2が、欧州とアジアの一部を含む約100カ国に広がった。

感染は急速に拡大し、WHOの集計によると、8万7000人以上の感染と、140人の死亡が報告された。

エムポックスには誰もが感染する可能性がある。しかしこの時は、主に男性と性行為をした男性の間で広がった。

このアウトブレイクは、ウイルスによりぜい弱な人たちにワクチン接種を行うことで、沈静化した。

追加取材:アレックス・スミス

(英語記事 WHO declares mpox global health emergency

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c5yp0wvzq00o


新着記事

»もっと見る