首相が国外に逃亡し、議会も解散された状態で、憲法上の根拠のない暫定政権が動き始めたが、内政の安定にとっての鍵は、この暫定政権の機能にかかっている。構成員はユヌス氏他20人前後のAdvisors(閣僚に相当)で、元高官、元軍人、元裁判官、学者、NGO代表、イスラム学者、少数民族代表、学生団体代表等。外交分野は外務次官経験者、マクロ経済分野は財務省、計画省、中央銀行総裁経験者をAdvisorsとするなど、重要政策を専門家に委ねる配慮が見られる。
中国はどう動くか
バングラデシュ経済は順調に成長してきており、日本企業も活発に活動している。これからの気掛かりは、その成長路線を維持できるかどうかである。
暫定政府は国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アジア開発銀行との関係重視を表明している。スリランカのように債務問題は大きくないことから、国内の経済活動が政治の混乱に影響されないように維持されることが急務である。
しかし、やはり大きな戦略的懸念は、バングラデシュを巡る主要諸国との関係であり、特に中国がこの国の政変の機会をどのように利用しようとしてくるかである。アワミ連盟はその成立の経緯から伝統的に反パキスタン親印、BNPは親パキスタン反印だけに、南アジアの戦略的勢力図に生じる可能性のある変化には十分な注意が必要である。