2024年11月22日(金)

21世紀の安全保障論

2024年9月9日

目的は電波情報の収集か

 目的は何か。中国軍は今年3月、偵察型の無人機(WZ7)を初めて日本海周辺で単独飛行させたのに続き、6月と7月には、同型の無人機を飛来させ、今回の侵犯機と同じように男女群島周辺を含む九州西方沖から鹿児島・奄美大島方面を周回させている。

 2019年以降、中国海空軍はロシア軍との連携を強化し、日本海-対馬海峡-東シナ海を中心に、パトロールと称して共同航行や共同飛行を繰り返している。無人機で収集できなかった情報を、有人機を使って詳細に収集することが目的だったと考えるのが妥当だろう。

 仮に領空侵犯行為は、操縦士の独断や特異行動だったとしても、情報収集機のY9は、九州南西空域を担当する空自・西部航空方面隊(福岡)司令部や九州各地に点在するレーダーサイトが、外国軍機の侵犯時に発する様々なレーダー周波数など電波情報を傍受したはずだ。日本の安全にとって2度と繰り返させてはならない深刻な事態と言っていい。

侵犯機に対する措置とは

 ではどうしたらいいのか。国際法上、国家は領空において完全かつ排他的な主権を有しており、外国の軍用機が領空侵犯し、退去や強制着陸に従わない場合には、悪質な主権侵害として撃墜することも認められている。自衛隊法84条は、(侵犯機)を強制着陸させ、領空から退去させるために必要な措置を講じることができると規定している。

 空自の訓練はこの規定に基づくもので、退去や強制着陸させるために、緊急発進した2機の空自戦闘機のうち1機が侵犯機の前に出て、機体を左右に大きく振る機体信号を実施する。それに従わない場合には、空自機1機が侵犯機に接近し、並行に飛行しながら機関砲(実弾と曳光弾)を前方に向けて警告射撃する。機体信号と警告射撃を実施しない1機(僚機)は、後方から侵犯機の行動を監視するといった手順だ。

撃墜は可能か

 空自は1987年、沖縄・南西諸島の領空を2度にわたって侵犯したソ連軍機に対し警告射撃を実施したことがあり、政府の強い抗議に対し、ソ連政府(当時)は侵犯機の搭乗員を降格処分にしたことを公表している。空自に警告射撃を認め、強く抗議するという政府の姿勢が、ソ連政府に影響を及ぼしたことは明らかだろう。

 その例にならえば、政府は今後、領空侵犯機に対して空自に警告射撃を実施させるか否かを、常に判断できる態勢をとっておく必要がある。だが問題は、警告射撃をしても侵犯機がそれを無視して領空を飛行し続けた場合だ。近年では、2015年にトルコの領空を侵犯したロシア軍機が、トルコ空軍機によって撃墜されたケースがある。


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