2024年4月16日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年2月18日

 その象徴とされるのが、中国のなかでも比較的水資源に恵まれている南部の長江から、水がひっ迫する北部に水路を引く大事業、「南水北調」である。合計3つのルートによって結ばれる水路は、すでに08年に1本目が開通し、河北省にある4つのダムに水が注ぎこまれて北京は焦眉の急を脱した。

 続いて10年には2本目が開通し、北京の人々は湖北省、河南省をまたいで注がれる丹江口ダムからの水によって多少の潤いを手にした。

 そして、14年10月には3本目が開通して事業は完成となるのだが、それによって北京の水問題が解決すると考える専門家は1人もいない。

水位が危険レベルまで下がった中国・湖北省の丹江口ダムを視察する温家宝首相(当時、2011年6月)(提供・Landov/アフロ)

 「南水北調によって北京の水の供給源となった丹江口ダムは、貯水量が不安定で、全体的に減少傾向が目立ちます。また、それ以前の問題として長江の水にも陰りが見え始めており、その貴重な水資源をわざわざ長い水路で運び、途中で大量に蒸発させていることも指摘されています。しかも、北京で消費される水のうち、地表の分が占める割合はいまや60%(再生水の分を除く)にまで落ちているのです」(かつて国務院の水行政に関わったOB)

 前出の梁麗スポークスマンによれば、北京ではすでに14年間もの間降水量の減少が続いた影響により、水の供給能力が目に見えて落ちているという。

 その影響で、永定河をはじめ域内を流れる21本の主要な河川が断流(水が海まで届かずに途切れる現象)となっていることに加え、北京の最大の水の供給源であった密雲、官庁ダムという2つのダムの水量は3億8000万立方メートルでかつての4分の1にまで低下。また北京市にある大小17のダムの貯水容量の合計は90億立方メートル強だが、12年の1年間は11億立方メートル前後の不足状況が続いた。

 水不足だけではない。北京の河川の汚染状況と中国全土の水問題の現状も深刻である。


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