2024年10月4日(金)

生成AI社会

2024年10月4日

「創造性」はどのようなタイプに分類できるか

 創造性をいくつかのタイプにわけることも行われています。認知科学者のマーガレット・ボーデンによる有名な分類を取り上げましょう。

 ボーデンは、人が創造性を発揮するときに無意識的であることが多いことから、意識とは無関係に創造性を分類し、結合的創造性、探索的創造性、変形的創造性の3タイプにわけました(Boden 2004)。この3タイプは、完全にわかれているわけではなく重なっていることもあります。

 まず結合的創造性は、なじみのあるアイデアや表現を組みあわせるタイプです。あんとパンを組みあわせてあんぱんを作り、あんぱんとヒーローを組みあわせてアンパンマンを作るというのは、その最たる例でしょう。絵画のコラージュや、映画のモンタージュ、文学のカットアップなども結合的創造性にあたります。(中略)

 たまに「創造性はすでにあるものの組みあわせだ」といい切る人もいます。アップルの創業者のスティーブ・ジョブズも、創造性をいろいろなものをつなぐことだといい、次々と画期的な製品・サービスを生み出してきました(ガロ 2011)。

 実際、異なった領域からヒントを得ることがあります。たとえばチャールズ・ダーウィンはマルサスの『人口論』からヒントを得て進化論を生み出し、パブロ・ピカソはアンリ・ポアンカレの多次元の数学に刺激を受けてキュビズムを作り出しました。こうした組みあわせも結合的創造性といえるでしょう。

 このような結合的創造性はAIが得意とします。生成AIの仕組みは、まさに膨大なデータから確率の高いものを組みあわせて生成物を出すということですので結合的創造性といえるでしょう。

 2番目の探索的創造性は、限りのあるパターンの数を試して、新しく価値のあるものをみつけ出すことです。有限のパターンから選び出すだけですので創造性に含めることに納得がいかない人もいるでしょう。

 たしかに3つのなかから1つを選び出すだけでは創造性があるとはいいがたい面があります。しかしきわめて膨大な選択肢のなかから、新しく価値あるものを選び出すことは簡単ではありません。それを探し当てることに創造性を感じる人もいます。

 たとえば将棋や囲碁は、指し手や打ち手のパターンが天文学的な数にのぼります。これまでにない手で勝ったら、それは探索的創造性といえるでしょう。新しく、勝ちにつながったという意味で価値があるからです。

 レシピも同じです。食べ物の組みあわせは、理論的には有限でしょうが、新しいレシピが日々生まれています。なおボーデンは、地理的空間の探索を例に挙げています。これまでに行ったことのないルートで車を進めたときには、探索的創造性が発揮されるといっています。

 

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