Wedge REPORT

2014年2月5日

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 湧永製薬は12年の全日本総合選手権を制した強豪ハンドボール部を有する。湧永寛仁社長は「企業はスポーツチームやアスリートを抱える理由として、①社員の一体感醸成、②知名度・イメージの向上、③社会貢献を目的として挙げることが多いですが、それしかないから衰退しているのだと思います」と説明する。

 選手を特別扱いせず、総合職社員として勤務させる。同期入社の総合職社員より評価の高い社員もいるそうで、OBには部長や役員にまで上り詰めた強者もいる。

湧永製薬はビジネスチャンス拡大のためドイツ・ブンデスリーガへハンドボール部員を派遣している。右は湧永寛仁社長、
左はハンドボール部OBの中川英二営業推進部長
(撮影・編集部)

 ハンドボール部OBで営業推進部長の中川英二さんは、「部のOBという特別な意識はなく、1人のビジネスマンとして高い業績を上げようと仕事に取り組んできました。ハンドボールだけに励み、仕事をしなくてよいという環境だったとすると、引退後はつまらない人生になっていただろうし、会社が部をもつ意味を見出せず、廃部になっていたかもしれません」と振り返る。

ドイツへ選手を派遣し本業とのコラボ図る

 12年8月からはハンドボール世界最高峰のドイツ・ブンデスリーガへ現役部員を派遣し始め、現在は3人が在籍する。「当社は本業でドイツ進出を何度か試みていますが、今の知名度では、残念ながら会う人が限られ人脈がなかなか築けません。スポーツ界は政財界と繋がりが強く、これをビジネスに結び付けようと考えています」(湧永社長)。

 日本でもアントニオ猪木氏、谷亮子氏など、政界には多くのアスリート関係者が存在する。親会社やスポンサーとの関わりから、財界との繋がりも強い。派遣した選手を語学学校へ通わせ、ドイツ語を使っての人脈づくりを担わせている。

 13年7月から「フクセ・ベルリン」に所属する谷村遼太さんは「週5日、1日3時間半のレッスンを受け、約半年で日常会話には困らないレベルになりました。今後は人脈づくりを加速させていきます」と話す。こうした成果は早くも出始め「これまで会えなかったレベルの人に会うことができている」(湧永社長)という。同様の方法で他国への進出も検討中である。

 日本はアスリートを特別視しすぎてきたのかもしれない。「スポーツだけやっておけばよい」という企業側の「甘やかし」とアスリートの「甘え」の行く末は、経営が傾いたときの「首切り」である。「ビジネスマンとしても能力の高いアスリートが多い」(湧永社長)のであるならば、競技種目にもよるが、現役中は人並みに働き、引退後はビジネスの最前線で活躍する方式の広がりが、結果としてアスリートを救うことになるのではないだろうか。

◆WEDGE2014年2月号より










 

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