2024年10月1日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月1日

 ハマス側は規模が縮小し、弱体化しているが、イランとヒズボラがこの衝突に完全に介入して中東地域全体を紛争に巻き込むことを期待して引き続き抵抗し、妥協しようとしていない。

 ガザの衝突の関係当事者全員が、時間稼ぎをしている。しかし、現実には、彼らは結果をコントロール出来ると信じて危険な賭をしているのに過ぎない。2カ月間という期間は米大統領選挙では問題ではないが、ガザや南部レバノンの一般市民やイスラエル人の人質にとっては生死を分ける問題なのだ。

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米大統領選を意識したにらみ合い

 トランプ前大統領が、ネタニヤフ首相に大統領選挙で民主党を有利にしないよう休戦協定に合意しないよう求めたという話は、過去にイランの米国大使館人質事件(1979年~1981年)が続く中での米大統領選挙(1980年)でカーター大統領を破ったレーガン候補が人質を解放しないようにイラン側に密かに要求したという陰謀論を彷彿とさせるが、やはり、トランプ前大統領の本音は、自分が大統領になる前に面倒な事は片付けて欲しいのだろう。

 しかし、ネタニヤフ首相の方が鋭く対立しているバイデン大統領の中東政策を継承しそうなハリス候補を勝たせたくないので大統領選挙前には休戦や人質問題を解決させないようにしているという見方は有り得る。

 この論説が指摘するように米大統領選挙が近づくにつれて当事者達がそれぞれの思惑から、少なくとも米大統領選挙が決着するまで様子見をしているという指摘は、その間もガザや南部レバノンで人道的危機が続いているのだが、残念ながら概ね正しいように思われる。イランもヒズボラも、大統領選挙前にイスラエルに対し大規模な報復をして反イランのトランプ大統領を勝たせたくないと思っていて報復を思い止まっているのであろう。

 イランがロシアに短距離弾道弾を供与したと報じられているが、これはイラン的なフラストレーションの意思表示かもしれない。しかし、この論説が指摘している通り、イスラエルとイラン・ヒズボラの間の抑止力のバランスは回復しておらず、何処かのタイミングでイランとヒズボラは報復により対イスラエル抑止力を回復させようとするだろう。


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