ヤロスラフ・ルキフ、BBCニュース
レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラを標的にしたイスラエルの空爆は、29日も続いた。レバノンのナジブ・ミカティ首相は、同国全土ですでに100万人もの人が家を追われた可能性があると述べた。
ミカティ首相は、「これまでで最大規模の避難行動かもしれない」とした。
イスラエルは27日、レバノンの首都ベイルートへの空爆でヒズボラ指導者ハッサン・ナスララ師を暗殺した。その2日後の29日の空爆では50人以上が殺害されたと、レバノン保健省は報告している。
一方、ヒズボラはイスラエル北部に向けてさらにロケット弾を発射した。
ヒズボラは29日、同組織の南部戦線を指揮していたアリ・カラキ司令官や、高官のナビル・カウク氏もイスラエルの空爆で殺害されたことを認めた。
イスラエル軍トップのヘルジ・ハレヴィ参謀総長は、「ヒズボラに対して厳しく攻撃し続ける必要がある」と述べた。
こうした中、イスラエルはイエメンの反政府武装組織フーシ派の軍事目標に対して「大規模な」空爆を行ったと発表した。
ヒズボラとフーシ派はいずれも、イランから支援を受けている。両組織は、イランが同様に支援するイスラム組織ハマスとイスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で戦争状態にあることをめぐり、イスラエルに対する敵対行為を強めている。
避難所や病院がひっ迫
レバノンのミカティ首相は、市民は空爆によってベイルートや、南部国境地帯を含むほかの地域からの避難を余儀なくされていると述べた。
レバノンで取材するBBC特派員は、避難所や病院がますます逼迫(ひっぱく)し、支援が必要な全員への対応に地元当局は苦慮していると報告している。
アヤ・アユブさん(25)はベイルート南郊にある自宅に残るのは危険なため、一家6人で避難せざるを得なかったとBBCに話した。
自宅周辺では「すべての建物が完全に破壊された」という。現在は家族以外の16人の人たちと一緒にベイルート市内の住宅に身を寄せている。
「私たちは27日に自宅を出たが、行く当てがなかった。午前2時まで路上にいたところ、建設中の集合住宅の中へ入るのを助けてくれる人たちが現れた。夜はろうそくをつけて生活している。水や食料は外から調達してこないといけない」
ジャーナリストのサラ・トマズさん(34)は、27日に母親ときょうだい2人と一緒にベイルート近郊の自宅を出たと、BBCに述べた。
車で10時間近くかけて、シリア経由でヨルダンに入ったという。
「身を寄せられる場所がヨルダンにある私たちは、幸運だと思う。ここには母の親類がいるので。この先どうなるかわからないし、いつ戻れるのかもわからない」と、トマズさんは付け加えた。
国境を隔てたヒズボラとイスラエルの交戦は、これまで散発的に起きていた。しかし、昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲とイスラエルの報復攻撃を受け、ヒズボラがパレスチナ人に連帯を示すためにイスラエル側に攻撃を仕掛けたことで、事態がエスカレートした。
以来、ヒズボラ戦闘員を中心に数百人が殺害され、イスラエルとレバノンの国境の両側で何万人もの人が避難を余儀なくされている。
中東での紛争拡大が懸念
イスラエルは29日、イエメン国内にあるフーシ派の標的への空爆も実施した。ラスイサやフダイヤの発電所や港を攻撃したという。
後に、港での大規模爆発の様子をとらえた映像が浮上した。
イスラエルはフーシ派による最近のミサイル攻撃に対応するため、そしてイラン製の武器の輸送に使用されている施設を破壊するために、これらの標的を攻撃したと説明している。
イエメンの広範囲を支配するフーシ派は、イスラエルの攻撃を「残忍な侵略行為」だと非難。4人が殺害され、33人が負傷したとし、イスラエルへの報復を誓った。
中東地域をめぐっては、紛争拡大への国際的な懸念が高まっている。
アメリカ政府はイスラエルに対し、ヒズボラやイランとの全面戦争に発展させないよう警告。大規模な紛争が起きれば、イスラエル北部から逃れた人々が帰還できない事態になり得るとしている。
(英語記事 Israeli strikes may have displaced million people - Lebanon PM)