アメリカ南東部をハリケーン「ヘリーン」が26日から縦断し、壊滅的な洪水を引き起こした。BBCが提携する米CBSニュースは、29日までに死者が少なくとも105人に上っており、さらに増えると見込みだと伝えた。
ハリケーン「ヘリーン」は26日に南部フロリダ州に上陸し北上。ジョージア、サウスカロライナ、ノースカロライナ、テネシーの各州に大きな被害をもたらした。
死者の多くは、ハリケーンが熱帯低気圧に変わったあとに直撃したノースカロライナ、サウスカロライナ両州で確認されている。
ノースカロライナ州の当局は29日夜、同州バンコム郡だけで30人が死亡したと発表。州全域で、停電や携帯電話の不通、倒木、通行止めが発生しているとした。
バンコム郡は特に被害が甚大とみられ、1000人近くの行方が未確認となっている。
ノースカロライナ州のロイ・クーパー知事は、「今回の暴風雨は壊滅的な被害をもたらした。(中略)歴史的な規模となっている」と述べた。
生存者の捜索続く
米赤十字社は、南東部の各州で計140カ所以上の避難所を開設。29日時点で住民2000人以上が利用していると発表した。
被災地では生存者の捜索が続いている。ノースカロライナ州では、道路が断絶された被災地に食料や水などが空輸されている。
同州の多くのガソリンスタンドは閉鎖しており、営業しているスタンドには車両の長い列ができている。数少ない営業中のスーパーには、水を求める客が詰めかけている。
今回の暴風雨による被害額は、全体で950億~1100億ドル(約13.5~15.7兆円)と見積もられている。
連邦政府は、フロリダやジョージアなど6州を対象に非常事態宣言を出した。ジョー・バイデン大統領は28日、「ハリケーン『ヘリーン』の被害は途方もないものだ」と述べた。
ハリケーンから変わった熱帯低気圧は、かなり勢力が弱まったものの、今後も強風、洪水、竜巻の発生の恐れがあると、気象関係者は注意を呼びかけている。
海洋大気庁(NOAA)は、今年1年で最多25の暴風雨が発生し、うち8~13がハリケーンに発達する可能性があると警告していた。ハリケーンシーズンが正式に終わる11月30日までに、さらに多くの暴風雨が発生する恐れがあると、当局は警戒を呼びかけている。
(英語記事 Thirty killed in one county after hurricane swamps North Carolina)