ミャンマーでは、内戦のすべての当事者に人道援助のための回廊を開くよう中国をはじめ隣国が圧力をかける必要がある。進行中の暴力に責任を有する軍事政権を率いるミン・アウン・フラインとアラカン軍の司令官たちに対する罪状を裏付けるために、米国は衛星画像を提供することによってICCを支援すべきである。
軍事政権に対する制裁はさらに引き締める必要がある。地域のすべての諸国に対する圧力が抜け穴を塞ぐ上で役に立つ。もちろん、米国その他諸国がミャンマーの人道に対する犯罪を止めるために出来ることには限界がある。しかし、彼らが可能なことをすべてやっているとはとても言えない。
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ラカイン族とロヒンギャの民族対立
昨年10月、少数民族の武装組織の連合体Brotherhoodがシャン州で攻勢を仕掛け、これに触発された他の少数民族もそれぞれその支配地を拡大するにおよび、ミャンマーは分裂状態にあるが、ベンガル湾に面するラカイン州では、アラカン軍(Arakan army)が同州のほぼ全域を掌握するに至っている。この州の多数派は仏教徒のラカイン族であり(アラカン軍は自治を目指して活動するラカイン族の武装組織)、ムスリムのロヒンギャは少数派であるが、北部では最大の民族である。
シンクタンクCrisis Groupの8月27日付けの報告によれば、アラカン軍が掌握した地域は少数民族が支配下に置いた地域の中で面積と人口において最大であるが、その成功の代償も大きく、数万人のラカイン族およびロヒンギャが家を追われているという。
対抗する政府軍は日常的に無差別の攻撃を繰り返しており、5月には、州都シットウェの郊外で一般住民に対する最も酷い部類の残虐行為が行われたようである。他方、アラカン軍も同罪であることは、この社説に言及がある。
アラカン軍が政府軍を敗走させることが確実だとしても、彼らがその支配下の領域と住民を治め得るかどうかは疑わしい。大きな障害の一つはラカイン族とロヒンギャの民族対立である。
軍事政権はこの民族対立を煽っている。そして、アラカン軍との戦闘にロヒンギャを無理矢理徴用し、あるいは、テロリスト呼ばわりしていたロヒンギャの武装グループ(彼らはコックスバザールからの徴用も行っている)と協力もしている。