議会共和党幹部の間では、「このまま女性有権者の支持離れが続けば命取りになる」と危機感を強め、トランプ氏に対し、これまでの女性蔑視発言の自制などを求める動きが目立ち始めている。
トランプ候補は窮余の一策として、去る1日、女性有権者の最大関心事のひとつとなっている人工中絶問題に関連し、大統領に返り咲いた場合、全米での中絶禁止措置に対する「拒否権発動」の意向を表明した。
トランプ氏はこれまで、全米での中絶禁止措置についてはあいまいな態度をとり続け、去る8月下旬、J.D. バンス共和党副大統領候補が「トランプ氏は(大統領として)全米中絶禁止には拒否権を発動するだろう」と語った際にも、「そんな話はしていない」としてバンス氏を批判していた。
それが、投票日が迫りつつあることを念頭に、トランプ氏が中絶容認を求める女性層向けに一定の譲歩を示したと受け止められている。
支持基盤である超保守派とのジレンマ
ただその一方で、トランプ氏の重要な支持基盤である南部諸州の超保守派は、女性層に関心の高い中絶問題や銃砲所持規制などでの妥協には断固反対の態度をとり続けているため、トランプ陣営としてもここにきて、あからさま軌道修正に踏み切れない事情もある。
この点、 歴代共和党政権で世論調査を担当してきたホイット・アイアーズ氏は最近、政治メディア「The Hill」に対し、「トランプにとって、ハリスの女性支持幅をいかに削るかが課題だが、今や最大のチャレンジは、女性票の負債を償うだけの差を男性票ではたしてどこまで広げられるかどうかだろう」とコメントしている。
しかし、男性票目当てに“マッチョ”ぶりを前面に出しすぎると女性有権者にさらに敬遠されることになるだけに、トランプ氏にとって、男女間の微妙なかじ取りも容易なことではないようだ。