ハリスが動かすいくつもの波
とりわけ今回は、女性層のハリス傾斜が目立つ。女性候補だけに、ある程度、女性支持が高まるのは、16年大統領選でのクリントン候補の場合を見ても当然と言える。だが、今年の場合、ハリス氏に対する女性票がかつてなく集まりつつ背景として、以下のような点が指摘されている:
〈黒人女性支持層のうねり〉
非営利研究機関「Highland Project」が最近、黒人女性有権者を対象に実施した調査結果によると、ハリス候補について65%が「絶対支持」、16%が「一定支持」、合わせて81%が好意的に受け止めていることが明らかになった。これに対し、トランプ候補についての支持はわずか3%にとどまった。
ハリス候補を支持する理由として、トランプ大統領になった場合、「米国民主主義が脅威にさらされる」「人種差別が拡大する」「生活が脅かされる」などの点を挙げている。
また、今回の大統領選挙について「必ず投票する」と回答した人が86%と極めて高くなっており、過去の選挙では見られなかった現象だ。
〈中高年婦人層のトランプ離れ〉
全米最大の高齢者組織として知られる「米国退職者協会」(AARP)が先月、50歳以上の女性有権者を対象に11月大統領選挙について意識調査を行ったところ、「ハリス支持」が54%だったのに対し、「トランプ支持」は42%だった。
過半数がトランプ候補への支持をためらっている理由について、「メディケアを中心とする社会保障政策を批判してきた」「自分たちの老後に不安を感じる」「言動が過激」「女性候補への共感」といった点が目立っている。
なお、「AARP」が、バイデン大統領が再選をめざしていた今年1月に行った同じ年齢層の女性有権者を対象とした調査では、バイデン氏がトランプ候補をわずか3%だけ上回っただけだった。
〈白人女性動向の変化〉
米有権者を男女、人種別にグループ化した場合、「白人女性」は全体の40%を占め、最大票田となっており、その投票動向はこれまでの大統領選においても特に重視されてきた。
16年大統領選では、クリントン候補が女性全体では54%得票したのに対し、トランプ候補は42%にとどまった。しかし、白人女性得票率では、逆にトランプ候補が52%、クリントン候補43%となり、トランプ候補が9%上回った。
米政治評論家たちの当時の解説によると、クリントン候補の最大の敗因が「白人女性の間での支持が広がらなかったため」とされた。
20年大統領選の場合、トランプ候補は再選を果たせなかったものの、白人女性票では53%を獲得、バイデン候補の46%を上回った。
しかし、今回選挙では、そのカギとなる白人女性の投票動向に微妙な変化が見られる。その一例として、米メディアが大きく報じたのが、銃砲規制強化を求める全米組織「Moms Demand Action(ママたち、立ち上がれ!)」など、いくつかの白人女性グループによるハリス候補支持呼びかけの動きだ。
同組織は去る7月26日、米大統領選で急遽、ハリス氏がバイデン大統領に代わり民主党候補に躍り出た機会をとらえ、オンラインの「ズーム」で会員たちに「トランプ絶対阻止」「ハリス支持」を呼びかけたところ、1夜のうちに、全米各州から16万4000人が賛同、1日だけでハリス選挙組織向け政治献金も850万ドルの巨額に達した。
その後も、230人以上に上る退役エリート将校たちが、あいついで「民主主義ルール侵犯」などを理由に「トランプ不支持」「ハリス支持」声明を出したのに合わせ、夫人たちの間でも同様の動きが伝えられており、白人女性全体としてのトランプ支持率は16年選挙と比較しても、今後さらに低下の可能性が大きい。