2024年12月4日(水)

World Energy Watch

2024年10月9日

米国と日本の市場の違い

 日本製鉄のUSS買収の狙いの一つは、米国鉄鋼市場にあると考えられる。人口減少に見舞われる日本と異なり、米国の人口は増加を続けている。

 20年の人口は、米国、日本それぞれ3億3300万人と1億2600万人だ。40年にはそれぞれ3億7400万人、1億1280万人になり、60年には4億500万人と9610万人と予測されている。20年から40年間に日本の人口は24%減少する。米国は22%増加する。

 人口が減少する社会では、必要とされるインフラも縮小し、鉄鋼需要も減少する。日本の市場規模縮小に対し、米国市場は拡大する。拡大する市場は魅力だ。

 図‐1が最終製品になる前の粗鋼の国別生産量を示している。旺盛な需要を背景に中国が世界の半分以上の生産を行っている。

 国別の輸出入は図-2の通りだ。米国は世界最大の鉄鋼輸入国だ。鉄鋼貿易は政治問題化することがあり、関税、数量割り当ても時として実施される。日本からの輸出が問題になる可能性がある以上、米国内の生産が好ましい。

 企業別の生産量では、世界一は中国宝鋼集団だ。23年の生産量は1億3100万トン。2位はアルセロール・ミッタルの6850万トン。日本製鉄は4位4370万トン、USSは24位1580万トン。買収が成功すれば世界3位の規模になる。

 買収によるシナジー(相乗効果)も同業の間では大きい。技術、設備投資、資金調達など多くのシナジーが期待できるが、米国企業を買収するメリットは、市場とシナジーだけではない。

 大きな効果は、脱炭素時代の製造コストへの寄与だろう。


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