バイデン政権は中国が西側諸国の最先端技術の一部(半導体などの軍民両用技術を含む)を入手するのを阻止してきた。しかし、米国でのチップ製造業の復活を図るため、ホワイトハウスはインテルに数十億ドルの資金提供を約束した。一方、インテルはその顧客と資金が流出しているために株価は急落しており、今や買収の標的になりつつある。
トランプとハリスはどちらも、深刻な住宅不足に対処するプランを立てている。トランプのプランは非常に心配だ。というのは住宅ローン金利の引き下げを目指して、Fedに金利引き下げを迫るかもしれないからである。
ハリスは、供給と需要を増やすための補助金と家賃統制の拡大を提案している。両候補とも間違っている。アルゼンチンのミレイ大統領は、世界で最も厳しかった家賃統制法を最近廃止した。その結果、賃貸住宅の供給は170%増加し、賃貸価格は40%低下した。
政府介入が流行している時代には、市場こそが最終的に持続的な成長と効率を生み出すものであることを忘れてはならない。
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米国の経済政策への3つの誤解
上記のザカリア論稿は思いを巡らすことが多い内容である。ここでは3点ほど述べておこう。
第①は、直面する経済問題は政府の介入あるいは規制によって解決できるという発想を政治家は簡単に持ちたがることである。例えば、ハリスによる高い食品価格や高い家賃への価格統制論であり、トランプは輸入規制によって食品価格は低下すると珍奇な説を述べている。この点に関しては、ザカリアが言っている「政府介入が流行している時代には、市場こそが最終的に持続的な成長と効率を生み出すものである」との指摘は全くの正論だろう。
第2は、バイデンの産業政策は本当に成功しているのかどうかである。最近の製造業の建設投資の急増だけから見ると成功しているように見えるが、ザカリアが言っているように、「CHIPSプラス法」に基づいて供与されている補助金をみるとそうとはいえない。というのは、このところ経営的に苦境にあり、株価も低迷しているインテルに3月には85億ドル(商務省)、そして先日は30億ドル(国防省)の補助金が投入されることになっているからである。
最近、半導体大手クワルコムがインテルに買収を打診したとの報道もある。バイデン政権の補助金を梃にした産業政策は正しかったのか。“勝者の選定”問題を含めて、議論が起こって当然である。
第3にはトランプはハリスよりもマクロ経済の運営が上手であると国民はなぜ思っているのかという点である。ザカリアによると、それは国民の思い込みであるという。ザカリアの見方が正しいと思われる。