2024年12月27日(金)

未来を拓く貧困対策

2024年10月18日

「貧困の再発見」の時代

 この時期の生活保護の動向を確認しておこう。

 生活保護の利用者は1950年の制度発足以降、一貫して減少傾向にあった。これが増加に転じたのが、バブル崩壊直後の98年である(図2)。

 それまでは、生活保護の報道はごく散発的にあるだけで、社会から注目を集めることは稀であった。福祉分野の研究も2000年の介護保険制度などの契約サービスへの転換(福祉基礎構造改革)に注目が集まり、生活保護や貧困問題の研究者は、比較的、珍しい存在だった。

 しかし、生活保護の利用者が目に見えて増えていくなかで、「経済的に追い詰められる隣人」の存在が認知され、メディアもその流れに呼応した動きをみせた。筆者も所属する「貧困研究会」が設立されたのも07年のことである。

 やがて、「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」、そして「子どもの貧困」などのキーワードが生まれ、新聞、テレビ、雑誌を問わず、生活に困難を抱える人たちの実態を繰り返し取りあげるようになった。

 当時、筆者はウェブサイト「生活保護110番」を運営し、生活に不安を感じる人たちが匿名で気軽に相談できるコミュニティの運営をしていた。報道各社から「利用者の生の声を聞きたい」という依頼が、途切れることなく続いた。

 「生活保護」を含む記事の2つの山のうち、第1の(そして最も高い)山は、09年である。08年のリーマン・ショックの影響は日本にも及び、「派遣切り」とも呼ばれる製造業などで雇止めが相次いだ。大量の失業者の救済をどうするかは、同年末から翌09年正月にかけての「年越し派遣村」でメディアのなかでも中心的な話題として取り上げられるようになる。

 豊かであるとされてきた日本に、貧困が静かに広がりつつある。そのことが、誰の目にも明らかになった。それが、「貧困の再発見」の時代である。

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