2024年11月5日(火)

都市vs地方 

2024年10月30日

自社オンライン書店への誘導を

 そのためには、リアル書店が独自のオンライン書店を立ち上げることだ。大手書店の通販サイトは既にあるが、その使い勝手をオンライン書店の専業サイトに揃えることがポイントだ。

 オンライン専業書店の強みは、購入ボタンのクリック1つで購入が成立し支払いが完了すること、電子版を選択すればダウンロードできることなどがある。過去に遡って領収証を出力できる機能も確定申告する人にとっては重要なポイントだ。

 リアル書店で見つけた本は、リアル書店のオンライン書店で購入するようにする。あるいは電子版をダウンロードするようにする。利便性がオンライン専業書店に劣らなければ、立ち読みした本はリアル書店のオンライン書店から買う動機がはたらくだろう。

 また、リアル書店にあればよいと思う機能が店頭在庫の店舗間の融通だ。筆者の経験だが、オンライン書店で品切れだったので、全国に店舗網を持つ大型書店の在庫検索をしたところ、遠方の支店で目的の本がヒットした。注文し、行きつけの店舗で受け取りたかったが対応不可だった。

 そこで直接支店に電話をし、本と同じくらいの手数料を払って代金引換便で送ってもらうことになった。遠方の支店の店頭在庫をクリック一つで購入し、最寄りの店舗で受け取り、キャッシュレス決済することができればオンライン書店に対抗できるのではないか。

図書館で読み、書店で買う

 もう一つは、図書館と書店のハイブリッド戦略である。図書館で本を見つけ、書店で買う補完関係の構築がねらいである。

 新しい本との偶然の出会いなら図書館も得意だ。図書館の蔵書は書店よりも多いし、新刊本やロングセラーを含む定番本が主体の書店に比べれば図書館の蔵書は幅広い。

 所有と使用を分けて考えることにもヒントが隠されている。図書館には新しい雑誌も新刊本も置いてある。ベストセラーも揃っている。この点、書店と競合しそうだが、書店の本には単に読むだけでなく所有するニーズがあることも念頭に置きたい。読むだけなら図書館で十分、さらに所有ニーズを満たすには書店しかなく、どうせ所有するなら新品がよい。

 本でも雑誌でも、図書館で読み、書店で買って所有するという役割分担が見いだせよう。筆者が想定する図書館・書店ハイブリッド施設において、立ち読み機能は書店から図書館に移される。書店部門は新品の本を買うための機関、あるいはレジ前に併設した情報端末からオンライン書店で買うあるいは電子版をダウンロードするための機関となる。

 現在、図書館と書店が併設されるケースはあるが少数だ。とはいえ図書館で読み、書店で買うという明確な役割分担を設定しているケースは筆者の知る限り存在しない。

 現時点では筆者のアイデアに過ぎないが、読む機能と買う機能で融合した図書館・書店ハイブリッド施設が実現すれば、インターネットの普及に伴い変化を迫られている図書館、リアル書店の問題解決になるのではないか。

書店文化の存続を目指した「応援買い」も

 オンライン書店とリアル書店はそれぞれの強みと弱みがあり、互いを補完するかたちでの共存が可能だ。(リアル)書店を残すべき「文化」と捉え、オンライン書店に照らし利便性に多少の課題が残っていたとしても書店文化を存続させるべく、買って支援するという考え方も必要だろう。

 感覚的にはアイドルなどの「推し」を支えるのと大差ない。オンライン書店、リアル書店、これに図書館を加えた補完関係を認識のうえ、特にリアル書店のあり方について社会全体で確認すべきだ。

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