「マージンのゲーム」
10月26日、ハリスはミシェル・オバマと中西部ミシガン州での選挙集会に登場し、特に黒人女性に投票を促した。ハリス陣営は、女性票でトランプを大きく引き離したい考えだ。
ハリスは上記の選挙集会に加えて、ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領ディック・チェイニー氏の娘リズ・チェイニー前下院議員と一緒に、ウィスコンシン州、ミシガン州およびノースカロライナ州で演説を行った。リズ・チェイニーは、米連邦議会議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会の副議長を務め、2022年米中間選挙で落選したが、今も反トランプを貫き、自分を「保守派」だと主張している。
ハリスとチェイニーの遊説は、共和党予備選挙でトランプと戦った元国連大使ニッキー・ヘイリー氏の支持者の票獲得を狙ったものと言える。ヘイリー支持者には人工妊娠中絶容認とウクライナへの軍事支援に賛成する者が多いからだ。
カニネンによれば、激戦7州の内、特にペンシルベニア州の選挙は「マージンのゲーム」になる。ほんの僅かの票でも積み上げた方が勝利するという認識を示したのだ。ヘイリー票、黒人男性票およびヒスパニック票の積み上げは、トランプとの僅差の勝負には不可欠なのだ。
ハリス陣営の「投票率アップの戦略」
僅かな票の積み上げを狙うハリス陣営は、どのようにして投票率を高めようとしているのか。
10月10日に行われたペンシルベニア州のハリス陣営と支持者とのオンラインミーティングで、同陣営は戸別訪問が投票率を8%~10%高めると説明した後、支持者に対して、その場で投開票日までの戸別訪問の日程表に、自分が戸別訪問を実施できる時間帯にマークを入れるように促した。ハリス陣営の投票率アップの有効な戦略の柱は、激戦7州におけるボランティアの運動員による地上戦、即ち戸別訪問の強化だ。
また、同月14日のウィスコンシン州のハリス陣営と支持者とのオンラインミーティングで、同陣営は、すでに構築された人間関係のネットワークが投票率を高めると述べた。同陣営によると、有権者は政治広告よりも、家族や兄弟、友人、同僚の意見に耳を傾け信じる傾向があると言う。
ハリス陣営は、オンラインミーティングにおいて、2020年米連邦上院議員選挙でジョン・オソフ上院議員(民主党・ジョージア州)の陣営が、人間関係のネットワークを通じて、投票率を3.8%向上させた例を紹介した。また、同陣営は2018年の米コロンビア大学のデータ科学研究所の研究で、有権者が人間関係のネット―ワークを使えば、投票率が8.3%上がることを突き止めたと説明した。
さらに、ハリス陣営のスタッフは、2019年の非営利団体で無党派のターンアウト・ネーションの西部カリフォルニア州、コロラド州、東部コネチカット州および中西部オハイオ州を対象にした研究では、13.2%の投票率アップが見られたと述べた。陣営のスタッフが支持者をサポートすれば、さらに17.1%まで高まるとも説明した。
ハリス陣営は戸別訪問を核とした地上戦に加えて、人間関係のネットワークを通じて、確実に票を獲得する戦略を打っている。