常にはらむ〝不測の事態〟
北朝鮮は、6月にロシアとの間で一方が武力侵攻を受けた場合には他方が軍事支援することを定める「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。その時点では、ロシアは、ウクライナ戦争への条約の適用を否定していたが、最近の北朝鮮からの兵員派遣の動きは、北朝鮮・ロシア間の軍事協力が質的に一段と深化することを示すものだ。
北朝鮮には、朝鮮半島有事の際にロシアの軍事支援を期待するであろう。北朝鮮は、憲法改正で韓国を敵国と定め、韓国からのドローン侵入を非難して南北を結ぶ道路を爆破する等、韓国との緊張を高めている。ただ、当面は、北朝鮮が積極的に韓国と事を構えるメリットが特にあるとは思えない。
以上に鑑みると、現在のウクライナおよびガザ・レバノン以上に戦線を拡大することや、朝鮮半島や台湾で新たにことを起こすことについては自制的な要素もあり、ウクライナ戦争やイスラエル・イラン対立が並行して継続するとしても、米国および中国が直接介入することはなく、いまだ世界大戦に発展することが必然とまでは言えないのではないか。
他方、今後、偶発的な不測の事態が生じ、これが武力行使の連鎖を招く可能性は常にあり得るので、危機的状況における首脳間の意思疎通の仕組みが必要ではないか。