第6戦では、右足首捻挫の近藤健介選手が「5番・左翼」で先発出場し、1~6番までシーズン開幕と同じオーダーで臨んだが、起爆とはならなかった。シリーズ合計で奪った14得点は、87年の巨人、12年の日本ハムと並び、6試合の日本シリーズでは最小だった。
「固定観念を取り払う」臨機応変の采配
ソフトバンク打線を封じたのが、DeNAの強固な中継ぎ陣だ。
シリーズ6戦の救援陣の防御率は1.29と安定し、3戦目以降は合計11イニングをいずれも無失点に抑える安定感が光った。中川颯投手、坂本裕哉投手、伊勢大夢投手、森原康平投手らが役割をこなした。
レギュラーシーズンの救援陣の防御率はDeNAが2.81で、ソフトバンクが2.58と大差がなかったが、シリーズでは、ソフトバンクの救援陣が4連敗した3戦目以降に計20失点したのとは対照的な結果だった。
「全員が最高の力を発揮して、一つになれたと思います」
三浦監督は日本一に輝いたインタビューでこう語った。
監督に就任して4年目。実は三浦野球を象徴するようなネーミングは定着していない。しかし、そこにこそ、指揮官の信念があるのだろう。
著者が新聞記者時代の21年、新監督に就任した三浦氏に春季キャンプ直前にオンラインでインタビューをする機会に恵まれた。
このとき、三浦監督は、自身が掲げる野球スタイルや理想のチーム像について、攻撃的とも、守備的とも表現せず、「固定観念を取り払いたい」と強調していたことが印象的だった。
「目の前の試合で、相手より1点でも多く取れば勝てる。打ち勝とうと思っても、投手戦になることもあれば、予想に反した乱打戦もある。戦況や選手の状態を見ながら、8-7でも、1-0でも勝ちにこだわる野球に徹したい」
前評判の戦力差では圧倒的な差があるとされたソフトバンク相手に、臨機応変に采配を振るう指揮官のタクトもまた、下剋上には欠かせない要因だった。