この言葉が「ダブルイレブン終わった感」のすべてを象徴しているように感じるが、以前はダブルイレブンに合わせて、消費者は買いたいものを事前に物色しておき、11月11日の午前0時になるやいなや、パソコンやスマホのボタンを一斉にクリックするという人が多かった。それを「儀式」と呼ぶ人もいた。
だが、コロナ禍を挟み、そうした熱気を帯びた動作をする人は少なくなった。メーカーなど商品を提供する企業側は商品を潤沢に用意するし、ダブルイレブンに合わせた特別商品などの準備を着々と進めるようになったからだ。
企業側が躍起になればなるほど、次第に消費者は冷め、意識は変わっていった。コロナ禍の影響や不動産不況に伴う景気の悪化は著しく、若者だけでなく、就職難にあえいでいる中高年も続出。今年は政府が補助金を出して家電の買い替えを促進するように仕向け、各社もそのための特設サイトなどを設けたが、予想していたほど売上げは伸びていないようだ。
返品が続出
ダブルイレブンのシェアが全体の5割を超えるアリババ集団も、300億元(約6400億円)もの割引券を投入し、消費喚起を狙ったが、それもそれほど大きな効果を生まなかったようだ。むしろ、別の問題が浮上した。それは、一定の金額を購入すると、追加で割引がされる仕組みになっているため、いったん商品を購入したあと、すぐに返品するという消費者が続出したのだ。
そうしたやり方をするのは、アリババの割引券だけではない。商品に、ダブルイレブンに合わせた「特典」などおまけがついているものがあるが、その「特典」だけを入手し、肝心の商品を返品するという消費者が増えているのだ。
購入後、7日以内ならば返品可能というルールだからで、しかも返品の配送料は販売側の負担となる。企業によっては、返品率が6割7割、あるいはそれ以上ということもあり、社会問題化している。
上海に住む知人は「自分はそういうことはしないが、昔と違い、今では不良品が届く可能性は低くなっている。それなのに、特典だけもらって商品を返品するというのは、ルールを逆手に取った、一種の嫌がらせではないかとすら思う。アリペイやウィーチャットペイを使って支払うため、返品と返金の手続きは簡単になり、消費者の負担はないが、企業側は送料と手続きに莫大な負担を追う。結果的に、これは大きな問題にありつつある」と語る。