公職選挙法第142条の7は「選挙に関しインターネット等を利用する者は、公職の候補者に対して悪質な誹謗中傷をする等表現の自由を濫用して選挙の公正を害することがないよう、インターネット等の適正な利用に努めなければならない」と定めている。
これついては厳密なチェックがされなければならない。これらのチェック機能についてはAIによるチェックには一定の限界があり、マンパワーの充実が必要とされているが、チェックが行き過ぎることによる弊害、チェックが恣意的になる弊害もありうる。言論の自由とチェック機能との関係はきわめてデリケートである。
新聞やテレビ・ラジオは選挙中も一歩踏み込んだ報道を
代案として、新聞やテレビ・ラジオに要求されている選挙に対する中立性の要求を外すという考え方がある。日本の新聞は自主的に定めた新聞倫理綱領で「正確かつ公正」な報道を基本としている。テレビやラジオは放送法によって「政治的に公平であること」が要求されている。
そのため特に選挙が始まると、新聞・テレビ・ラジオが特定の候補者による過去の不祥事や疑惑に関する報道が途端に激減し、一方ではSNSによる一方的な情報が拡散するという現象が生じている。
しかし公職選挙法第148条は「この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定は、新聞紙(これに類する通信類を含む。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」と定めている。
公職選挙法の規定は、インターネット等に対しても新聞・雑誌に対してもほぼ同様に扱っているのである。それにもかかわらず、選挙になるとインターネット等の情報だけが氾濫し、新聞等の情報が乏しい点に問題がある。
日本の新聞等は、記事について相当に厳しい内部統制システムが存在し、公平性はもちろん一つひとつの用語についても厳しいチェックが存在する。そういうチェックシステムを生かし、インターネット等の情報についてもよく吟味し、インターネット等でもより正しい情報が流通するよう一歩踏み込んだ報道が期待される。
欧米のマスメディアではすでにかなり踏み込んだ政治報道、選挙報道がなされている。日本のマスメディアが欧米並みにそれぞれ一定の党派に偏した立場を明確にするのがいいとは思わないが、多少の緩和が必要ではないか。そのためにテレビ・ラジオについては放送法の改正が必要ならそのための議論を期待したい。