2024年12月26日(木)

Wedge REPORT

2024年12月25日

 一方、勤労世帯の所得はこのマンション価格の上昇に追いついていない。例えば、都内の勤労世帯の実収入は約864万円だ。もはや新築マンションは希望しても手が届かない所得水準であり、いわば「マンション難民」とならざるを得ない。

 年収の5~7倍がマンション購入金額の目安となる中で、共稼ぎパワーカップル世帯(夫婦の年収合計が一千数百万円)でも、購入可能なマンションの価格上限は最大で1億円前後になる。

 しかし、この価格の新築マンション(約70平方メートル)となると、23区の山手線の内側は難しく、山手線の外側のバス通勤となる地点か、埼玉、神奈川、千葉県の郊外に求めるしかなくなる。

 この数年の傾向として夫婦の合計収入をベースにローンを組んで、返済は夫婦連帯で行う「ペアローン」が増えており、パワーカップルで7割がこのローンを使っているといわれる。

 しかし、いまや日本人離婚率は35%であり、3組に1組が離婚する時代だ。パワーカップルであっても決して安泰ではない。

 「『ペアローン』は住宅ローン破産の予備軍となる。離婚して収入が減っても、ローンの支払いについては連帯責任を負わされてローン残高を返済し続けなければならないので、個人破産に追い込まれることもある」と警告をするのは不動産ジャーナリストの榊淳司氏だ。お互いの収入が減らずにローン残債がなくなるまで夫婦が離婚することなく支払えれば問題ないが、離婚率が高い今の世の中では、暗転するケースもみられるという。

世田谷、練馬区
セカンドベストを考える

 不動産コンサルタントさくら事務所(東京都渋谷区)の長嶋修会長は「世帯収入からして23区内の新築マンションに手が届かないのであれば、いまはセカンドベストを狙うタイミングではないか。大田区、世田谷区、練馬区などでバス便になる場所のマンションは下がり続けている物件もある。駅近でなくて、徒歩10分を許容できるならば、買えるマンションはある」とアドバイスする。

 またマンション事業コンサルティングのトータルブレイン(東京都港区)の杉原禎之副社長は「これからは、都心の高級マンションは、倍増した富裕層と外国人が増えることによる需要増もあり、今後も枯れることはない。50歳代になった団塊ジュニア世代が、親が所有する近郊・郊外部のマンションや戸建てを相続する機会が増大するが、団塊ジュニア層はすでに持ち家であることが多く、それらの相続案件が今後、中古市場に大量に出回る。これを割安に取得して、自分好みにリフォームして住むという選択肢がある。都内近郊や城北、城東のエリアでは、中古マンションで50〜60平方メートルの広さであれば5000万円くらいで購入できるものも探せばあるのではないか」と指摘する。


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