新築マンションを買えない層をターゲットに住宅メーカーやマンションデベロッパーは、賃貸住宅・マンションに力を入れようとしている。
大和ハウス工業は、23年度は3階建てのアパート形式の賃貸住宅を中心に約3万戸を首都、関西、中部圏の都市部を中心に供給した。また、積水ハウスは、同年度に3、4階建ての賃貸マンションなどを2万3676戸供給、24年度もほぼ同水準を見込んでいる。
マンション販売大手の住友不動産は、高級賃貸マンションに注力、JR中野駅の南口に直結する賃貸タワーマンション(地上37階、396戸)を完成させ、3月から入居を開始、現在のところ7割程度が埋まっている。
しかし、賃貸マンションの多くが2年から3年の定期借家契約になっている点は留意する必要がある。契約期間中の家賃の値上げは入居者の了解が必要なため簡単にはできないが、契約が満期になって、新たに契約する場合は、家賃を改定して値上げが容易にできる。家主側は物価に連動して、安定した利回りを確保できる。
コロナ禍が終わり、企業がリモートワークの日数を減らす動きが広がった要因も見逃せない。
都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷区)のオフィスの平均空室率(三鬼商事〈東京都中央区〉調べ)を見ても、23年12月までは6%台だったが、24年10月は4.48%まで下落、家賃も堅調に推移しており、オフィス需要も増えている。
都心でのオフィス需要が活発になると、多くのサラリーマンは以前と同じように都心への毎日の通勤を求められるようになり、やはり通勤に便利な駅近、23区内の住宅の人気が再燃することになり、東京一極集中が再加速する傾向が出始めている。
以上を踏まえると、もはや「マンション難民」の続出は避けられず、政策的な介入も必要になってくるのではないのか。
住宅政策の限界?
都内以外の選択肢も
国土交通省住宅局では17年から高齢者、子育て世帯、低所得世帯などを対象にした賃貸住宅をセーフティネット住宅とする制度を全国の自治体が登録して進めている(24年6月時点で約90万戸)。また全国的に増えている空き家を減らそうと「空家法」を23年に改正し、管理が十分でない空き家をなくそうとしている。
しかし、国や自治体が空き家を改造して賃貸住宅として貸し出すところに、大きく踏み込めていないのが現状だ。東京都内には23年10月時点で約90万戸(一部は流通)の空き家がある。だが、この空き家を中所得者用住宅として活用しようとする事例は限定的だ。