毎年1月下旬の1週間、世界中のメディアの見出しに「ダボス」の名が踊ります。多忙なビジネスパーソンたちも、お気に入りのニュースチャンネルの前に思わず釘付けになる、その理由は、スイスのチューリッヒから車で東へ2時間ほど向かった先にある小さなスキーリゾート地「ダボス」で行われる世界経済フォーラム(WEF)の年次総会。そこで開催される250ものセッションは、金融経済、国際紛争、貧困、気候変動問題といった多岐に亘る地球規模の課題に取り組むことを目的としており、そこでは今後の世界情勢を左右する数多くの「議論の潮流」や「出会い」が生まれます。
2014年1月に開催されたダボス会議は、安倍総理が日本の首相として初めて基調講演を行ったこともあり、国内外のメディアで例年を上回る大きな注目を集めました。私自身も日本企業17社共催の「ジャパン・ナイト」、そして日本国政府が主催した「ジャパン・ランチ」の司会を務める機会に恵まれました。
しかし、日本におけるダボス会議の知名度が依然として低いことは、少々残念です。国外では、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグのようなビッグネームたちが参加することを揶揄して、『リッチマンズ・カンファレンス』と批判する向きもあるようです。いわく、ダボス会議というものは、現実社会からかけ離れたお金持ちの道楽であり、実際には何も生まないトップバンカーたちのためのパーティー三昧であるのだ、と。
近年、ダボス会議およびWEFが主催しているいくつかの集まりに参加することができた経験者として、今回注目を集めたダボス会議とは一体何なのか、その実像と存在意義をお伝えしたいと考える次第です。
世界で最も持続性のある国際会議
ダボス会議は1971年に創設されて以来、44年間、一度も休んだことがありません。毎年1月、WEFから招待された世界中のリーダーが1週間もの間、ひとつの場所に集まり、国際的な問題とその解決策について徹底的に議論します。2014年のダボス会議には、100カ国以上から2,622人もの人々が参加しました。政治家、王族、起業家、ジャーナリスト、ハリウッド・スター…。その所属は様々です。そのような状況が他にありえるでしょうか。日本からも、安倍総理と大臣5人を含む121人が参加しました。
特に、20~30代の若いリーダーが占める割合が近年急激に増加している事実は、新しい時代をつくっているのは限られた特権階級のリッチマンではないのだということを表しています。多様な属性を持つリーダーたちが集まる、新陳代謝の活発な、世界で最も持続性のある国際会議の場。それだけでも、ダボス会議は大きな存在意義を有していると言えるでしょう。