世界に不確実性が増し、相互依存的になってきている現代、意思決定権のあるリーダーが自身のもつアイディア、将来計画を世界のトップリーダーたちと共有できる、または議論できるというメリットは、他の組織では見つけることができません。ダボス会議の会場には、どんなに偉い人であっても、通訳やボディーガードや太鼓持ちの取り巻きを同席させることはできないのです。
ネクタイすらも不要な会場の中では、個人と個人の資質が、丸裸の状態でぶつかり合います。私がつい笑ってしまったのは、ノーベル平和賞受賞者である、ムハマド・ユニス氏。彼は、WEFが夏季に開催する「サマーダボス」の会場を、Tシャツにサンダル履きというラフな姿で歩き回っていたのです。どこからどうみても完全に自然体な彼の前で、一体誰が、どんな見栄を張る必要があるでしょうか。一切の虚飾が通用しない空間で、本音と本音がぶつかり合う。そこもダボス会議の本質といえます。
最先端の知識をフリーで提供し合うハブ
WEFは世界中のパートナーと官民の垣根を越えて「Win-Win」の関係づくり、行動に繋がる知識の共有を行っています。私自身、世界で起こり得る様々な「リスク」について、WEFと協力して取り組んできました。注目すべきは、WEFが2007年に世界のトップ・リスクとして位置づけた議題が、世界的な資産価格の崩壊であったこと。リーマン・ショックが発生する数カ月前に発表されたこのレポートは、まさにその後の世界情勢を予言する内容でした。
WEFのレポートは、すべてオンラインで無料提供されています。2014年版も発表されたばかりです。ダボス会議を追体験するためには、メディアに載った情報だけでなく、直接ご自身でレポートの内容を確かめてみることをお勧めします。
たとえば、WEFが毎年発表している男女格差ランキングは有名ですが、日本は105位の低水準…。世界標準からいかに遅れているかを見ると、我々の一人一人が取り組むべき課題が見えてくるのではないでしょうか。
マット・デイモンが取り組む
貧困層への水衛生問題に関する活動を評価
既にご存知の方も居られるかもしれませんが、今年のダボス会議にはハリウッド俳優のマット・デイモンが参加しました。それを聞き、「ダボスはやはりアカデミー賞をとったようなセレブの集まりだ」と想像されるかもしれません。しかし、実際はこうです。ダボスの参加者は、彼の最新映画作品を褒め称えるわけではありません。世間的にあまり知られていないかもしれませんが、彼が取り組んでいる貧困層への水衛生問題の向上に関する活動について彼を評価し、支援や賛同を表明しているのです。