もう1つ、神宮外苑の森。ここは再開発の対象となって、神宮球場などのスポーツ施設の建て替えや高層ビルの新築が予定されているが、そのために多数の樹木が伐採されることになって、地元住民だけでなく外苑を愛する多くの東京都民らによる伐採反対運動が燃え上がった。
その折、筆者が神宮外苑に行って撮った写真であるが、ここでも古くからあったケヤキやエノキなどの樹木が大きく成長していた。本家の明治神宮の森とは規模が違うが、都内にあっては貴重な樹木群となっている。
その反面、ここでも危険と隣り合わせである。現に倒木が発生したようで、園路は通行止めとなっていた。自然教育園と違って個々の遠路は生活路ともなっていて住民の通行も多いし、ランニングなど利用も多いようである。そのような人たちは、一般的に頭上に覆いかぶさる樹木の危険性を気にしていない。いつ何時、日野市のような事態が発生しないとも限らないのである。
このような状況は、都内のあちこちで見られる。世田谷区にある都内唯一の渓谷で人気のある等々力渓谷では、谷の両岸の崖に生える樹木が高齢化して、倒木の危険があることから、現在渓谷への立ち入りと遊歩道の通行が禁止となっている。危険木の伐採や弱った樹木の樹勢回復作業が行われているようだが、高齢木がどこまで安全であるのか、特定することは不可能に近い。登山などで自然林の中を歩くときは、常にこうした危険を承知の上でのことなのだから、都内の公園等での散策であっても同様の注意が必要なのであろう。
桜並木にも倒木のリスク
また樹種によっては、サクラのように寿命が短い(100年)ものもあって、戦後公園や街路樹などに植えられたものが高齢化して、倒木や枝折れの危険が増している。樹皮が溶岩のようにごつごつしてきて、キノコが生えたりしてくると危険である。
しかし、日本人のサクラに対する愛着は深く、また観光資源になっているところも多いので、伐採を躊躇したり、反対運動が起きたりして揉めることも多い。写真7の桜のトンネルなどを見ると本当に美しいが、張り出した枝が折れれば、大変な交通事故になりかねない。
こうした都市の中の分断された小さな自然を見ていても、都市内あっても明らかに遷移が進んでいて、自然の摂理から外れたものはないということだ。
