2025年12月5日(金)

教養としての中東情勢

2025年1月20日

 ネタニヤフ首相は18日のテレビ演説で、停戦はあくまでも「一時的」だと説明、戦闘を再開すれば「強力に攻撃する」と強調した。停戦に怒る極右政党や支持基盤の保守派をなだめるためとも受け取れるが、地元の専門家は停戦を「戦略的な休戦」と解説しており、戦闘再開は必至との見方が強い。唯一の障害はノーベル平和賞を狙い、戦争を嫌うトランプ氏をどう説き伏せるかだろう。

ハマスの意思決定プロセスに変化

 対してハマスは軍事、政治両面で決定的な打撃を受けた。ガザでは軍事部門カッサム旅団がほぼ全滅、シンワル指導者、デイフ司令官ら多くの幹部が殺害された。当初は忘れさられていたパレスチナ問題に世界の耳目を引き付けたとして「政治的な勝利」を主張したが、頼みのイランやレバノンのヒズボラもイスラエルの軍事力の前に屈し、破壊尽くされたガザの現実はハマスの敗北を浮き彫りにしている。

 ハマスはこれ以上、ガザの政治、軍事力が弱体化しないよう、一日も早い恒久停戦を望んでおり、米ワシントン・ポストなどによると、今回の合意に同意したのもガザの軍事指導部の力が弱まり、カタール・ドーハの政治指導部の力が優位に立ったことが大きかったという。

 イスラエルはシンワル指導者が殺害された後、弟のモハメド・シンワルがその後継に就いたとみている。しかし、今やハマスの実権はドーハ組に移っている。ドーハ本部のハリル・ハヤ氏が事実上、最高指導者の役割を担っており、マシャル元指導者ら4人の補佐官が支えているという。

 いずれにせよ、今回の停戦合意が恒久停戦につながるとは考えにくい。第1段階の6週間はか細い停戦が維持されるかもしれないが、その後に停戦が破綻するのは時間の問題だろう。ガザの住民の悲劇が終わるにはまだまだ時が必要だと思われる。

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