さらに、論説が指摘しているように「米国が中国に対抗するためには、『鞭』だけではなくではなく、米国市場へのアクセス拡大やより豊富な開発資金といった『ニンジン』が必要」であるが、何を具体的に提供できるかは、市場経済の米国にとって容易でない課題であろう。
中国は「信頼」されているのか
中南米における中国の今後の影響力に関連して、2点指摘しておきたい。
第一に、昨年より一層顕著になりつつある中国の経済的困難と社会不安の増大、トランプ就任後の米中貿易争い激化に起因する「外需減少」が及ぼす中国国内経済への影響、大豆やトウモロコシの国内生産増と「輸入減」は、中長期的に中南米諸国における中国の存在感低下につながると思われる。
第二は、日本の外務省が23年11月~12月にかけて、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコ、ボリビア、ウルグアイ、トリニダードトバゴで実施したアンケート調査(18~65歳、各国300~400人)の結果である。「現在重要なパートナーはどこか」との質問に対し、ウルグアイおよびボリビアでは、中国が米国より重要と答えた人が多かった。他の国においては、米国重視の人が多数であったものの、中国をあげる人も多くいた。
それと比較し、「もっとも信頼できる国はどこか(一つ選ぶ)」との質問に対しては、全ての国で米国が圧倒的に一番であり、中国は10%台ないし一桁台であった。中国は多くの国において経済的存在感は増したが、国としての「信頼」を勝ち得ていないことは明白である。

