2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月28日

 中国は別の意味でもソ連とは異なる。中国は戦略的優位性に焦点を当て、体制にとらわれず、誰とでも喜んで協力する。「彼らは何も要求しない」とアルゼンチンのミレイ大統領は中国について、好意的に語っている。

 ラテンアメリカにとって最も深刻なリスクは、米国が対中競争に勝利するために見当違いの努力をして、中国と同じ態度をとることである。つまり中国に熱烈に対抗し、民主主義や「法の支配」はどうでもよくなることである。

 トランプは、彼が計画している強硬策がうまくいくかどうか、そしてそれが裏目に出る可能性について心配すべきである。

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ラテンアメリカ政策を強化するトランプ

 論説が指摘するように、米国は、政治経済両面で「裏庭」と言われた中南米地域に、30年以上の間、十分な時間もエネルギーも注力してこなかった結果、その「存在感」は低下している。

 この間、中国は南米諸国(特にブラジル、チリ、アルゼンチン、ペルー、ウルグアイ等の資源・食料輸出国)との関係強化に努め、中国への経済依存度を高めてきた。また、中国は、政治的スタンスを差別せず、キューバやベネズエラ、ニカラグアのような「権威主義的国家」や人権侵害で国際的に非難されている国とも「絆」を強化してきている。

 さらに、2017年以降、パナマ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラスの中米・カリブ海5カ国は、台湾との外交関係を絶ち、中国との国交樹立を選んだ。中国とラテンアメリカ諸国は、「共存の時代」に入っているとも言える。

 トランプ大統領は「モンロー主義」に言及し、国務長官にキューバ系のマルコ・ルビオ上院議員を指名する等、ラテンアメリカ政策を強化すると予想されている。実際、ルビオ氏は、左派への潮流(ブラジル、メキシコ、コロンビア等)に対抗するため、保守的な指導者達(アルゼンチン、パラグアイ、エクアドル、エルサルバドル、コスタリカ、ガイアナ等)との連合を提唱している。

 その一方で、プーチンや金正恩のような独裁者に対するトランプの「友好的姿勢」は、ワシントンの道徳的権威を損なうかもしれないし、ベネズエラやキューバの独裁者への支援を正当化するための口実を、メキシコのような国々に提供することが懸念される。


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