なぜ「アメリカ」で、売れ始めたのか?
トランプ大統領が、どんな政策を示そうが、基本的にアメリカは移民の国、人種のるつぼだ。英語が基本だが、国民の20%を占める移民は英語が不自由だ。超大国アメリカだが、国民全体の英語識字率:80%となる。そんな人に取り、ポケトークのようなAI通訳機は大変便利なものになる。
では、ポケトークは移民に大量に売れているのかというと違う。
「今、売れている先は、病院、学校、役所などです。移民の人々にサービスを供給する側が、通訳機としてポケトークを使っていただいています」(若山社長)
要するにサービスを確実に実施するツールとして、選ばれているわけだ。これがスマホアプリだとどうなるか。日本以上に多種多様のスマホになるだろうから、サービスの確実さは落ちる。
「教育関連の展示会などに現地スタッフが出席してPRを行っています。そして、実際に使用して下さった方々の口コミで利用が広がっています」(若山社長)
一斉採用ではなく、隣が採用したから、では自分ところでもと言う感じで普及していくそうだ。このようにしてポケトークは、アメリカで絶好に売れているのだ。
特に転機となったのが新型コロナウイルスによるパンデミックだ。移民の多いアメリカでは、英語を話すことのできない患者との間で混乱が起きたため、同じ失敗を繰り返さないために、ポケトークのような通訳デバイスが求められたのだ。
「多様化」するポケトーク
今、ポケトークを買おうとすると、4種類の中から選択をすることになる。
メインは、テレビCMでもお馴染みの「S2」シリーズ。小型のS2と今時サイズのS2 PLUS。国際SIMを内蔵しており、国、エリアを気にせずに使うことができる。
ご自慢の機能は双方向自動通訳。双方向自動通訳というのは、例えば通訳を「英語」→「日本語」にセットしたとする。返事をする時、今までなら「日本語」→「英語」にセットしなおさないとダメだったのが、勝手に言語を判断。セットしてある二言語なら、自在に通訳してくれる機能だ。
S2は一文完全に終了して通訳するので、精度は高く、通訳率はほぼ100%を誇る。だが、終わって通訳なのでセミナーのように長々喋られる時には不向きだ。観光、買い物など、対人向きの通訳機だ。
通訳もかなりこなれている。シェイクスピアのハムレットでお馴染みの「To be or not to be, that is the question.」を通訳させると、結果は「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」と極めて文学的だった。
次は、ポケトークライブ通訳。セミナーなどで一方的に話すことを、対訳形式で通訳してくれる。同時なので精度は落ちるが、それでも95%以上の正確さを誇るという。こちらはPCなどを使うので、機材によっては、より認識率が落ちるかもしれない。専用ハードはそれだけの価値を持つのだ。
3つめは、ポケトーク カンファレンス。これはライブ通訳が聞き手側がポケトークを用意するのに対し、カンファレンスは主催者側が通訳結果を、傍聴者のスマホに送信するというモノ。傍聴者はお金を支払う必要がない。
最後は、スマホ用のアプリ、ポケトークappだ。自分のスマホで使えるが、精度、対応言語数は、S2に及ばない。
いろいろなサービスが用意されているが、やはり専用端末があるS2が彼らのメイン。精度がいい。また、アメリカで成功したのは、通訳品質にこだわり、専用デバイスを用意したためだ。まさに「石の上にも三年」。こだわり抜くことは大切なのだ。
