漁獲枠はどうあるべきか?
TAC設定の説明や意見などを読んだり、聞いたりしていると「情報不足」や「教育」の違いにより大きな勘違いが起きています。恐らく、拙発信などを通じてその誤りに気付き目が覚めた方もおられるかと思いますし、そういう報告も来ています。
しかしながら、これまでの経緯と無謬性(むびゅうせい)から、今さら軌道修正できないし、「魚を獲らせて欲しい」という声の大きい人たちに配慮してしまい、「悪いと思っていてもそのままじっとしている」といったケースは少なくないと思います。
漁獲枠はその漁獲量をターゲットにするようなものではありません。あくまでも科学的根拠に基づいた漁獲量の設定が絶対条件です。
獲り切れない大きな漁獲量の設定は、漁業者にとっては今まで通りでよいために不満は出ません。しかしながら将来100%の確率で魚が獲れなくなって困ることになります。そこには「正しい情報」と「教育」が欠如しています。
資源管理が上手くいっている国々の魚種と同じように、漁獲枠の設定は実際の漁獲量とほぼイコールにするべきです。また、実際海外で聞いた例ですが、2年連続で枠の消化率が、例えば70%を切る場合は枠の配分を見送るといった制度も必要でしょう。こうすれば、獲り切れない漁獲枠は漁業者にとっての「リスク」となるので、現実的な漁獲枠の要求につながります。
消化率ルールの適用は23年度の低い消化率を見れば、漁業者の方から枠の削減要求がくることでしょう。現在のルールが資源管理に機能していないことに気づいて目を覚ますべきなのです。
筆者は北欧などの買付の最前線で、漁獲枠とにらめっこしながら20年以上ビジネスをしてきました。そして漁獲枠の効果を目の当たりにしてきました。時間の経過とともに、現在のTACの運用は誤りであり、TACなしで漁獲してきたことに対して大きな反省をすることになります。しかし、時計の針は元に戻りません。客観的な事実に基づき、できるだけ早く世界の成功例を適用すべきなのです。