世界各地で、争いの火種が絶えない。戦後築かれた国際秩序は深刻な危機に直面し、世界はかつてない試練の時代を迎えている。
しかも、大国が秩序を安定させるどころか、武力を背景に争いを仕掛け、「争いがさらなる争いを呼んでいる」のが現在の状況である。
残念なことだが、こうしてエスカレートしてしまった問題を解決する知恵を人類は持ち合わせていない。そのことが、昨今の紛争や戦争で改めて証明されてしまった。
知恵を絞るべきは、問題を起こさないための「予防」であり、「危険の芽」を事前に摘む工夫である。
思えば近代以降の人間の歴史は、「問題」が貧困であれ、環境危機であれ、領土をめぐる対立であれ、「問題→対策」というパターンの中に進歩の希望を見出そうとする営みの繰り返しであった。
私たちがその都度、問題として取り上げる対象の根底には、いつも人間同士の争いがあり、それを促す「敵─味方」「正義─悪」といった二項対立的な発想があった。それを超えて、人々を互いに突き放したり、逆に一つに結びつけたりする「依存関係」の視点から、人々を争わない社会に向かわせる方向はないものだろうか──。
そうした問題認識から、私は、2023年5月に『争わない社会─ 「開かれた依存関係」をつくる』(NHK出版)を上梓した。
