2025年2月7日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年1月28日

 3歳未満の漁獲を原則禁止にしている大西洋に比べたら、半分位の回復スピードですが、太平洋でも科学的根拠に基づくTAC(漁獲可能量・以下漁獲枠と同義で呼ぶ)による成功例となってきています。ただし、我が国で漁獲枠が機能しているのはクロマグロだけです。

 北欧・北米・オセアニアなどで、ビジネスを通じ最前線で漁獲枠と20年以上接してきている筆者だけでなく、それらの国々の関係者にとってもこの事態は「異常」です。

 20年の漁業法改正で、25年までに海面漁業生産量の80%(カツオ、マグロ、サケ他国際資源や貝類・藻類等を除く)がTACにより管理されることを目指すことになりました。しかしながらその予定が遅れています。

 理由はTACの意味や効果が関係者に正しく理解されていないからです。このため、TACは設定されても実際の漁獲量より多く、資源管理に効果がないという事態が起きてしまいます。漁業・水産業を成長産業にしている国々とは「似て非なる」設定と運営をしてしまっているのです。

 もともと大きすぎるTACを設定しておいて「効果がないではないか」という意見が出たりします。効果がない処方箋で薬を飲むのと同じで効果などありません。今のままでは時間の経過とともに大半の魚種は資源量が減って魚が獲れなくなり、将来への負の遺産が増えていくだけです。

魚の資源を守る漁獲枠の意味

 毎年多くの魚種で魚が獲れなくなり、漁業者だけでなく、魚を加工や販売をすることを生業とする地方の方々、そしてその魚を食べている消費者を含め社会が困っています。

 日本の大失敗は世界で例外です。なぜなら世界全体では生産量(漁業+養殖量)は増え続けているからです。しかしながら、人口増加や健康志向による需要増加から、供給不足と価格上昇が今後確実に続くことになります。

 世界での生産量(漁業+養殖)の日本の順位は、22年で12位と下げ続けています。1970年代から80年代の約20年という長期にわたり、世界1位を長年維持してきたかつての姿はありません。

(出所)みなと新聞 写真を拡大

 一方で対照的に世界全体では毎年過去最高の更新が続いています。インドネシア、インド、ベトナム、ペルー、バングラデシュ、フィリピンといった国々にも追い抜かれました。ノルウェーには21年に抜かれましたが、抜かれたのは海水温が低い海域の国々だけではありません。また、排他的経済水域(EEZ)では圧倒的に広いのに、韓国との差も僅差になっています。

 そのような非常に厳しい状況が続く中、日本の水産資源を回復させようと数量管理による資源管理が、漁業法改正により20年12月から始まりました。

 本来は、国を挙げて、政府が目指す「国際的に見て遜色がない資源管理」に協力すべきなのです。しかしながら、資源管理に関する誤解や偏見が多く残っており、そのスピードはかなりゆっくりです。それどころか、スルメイカ、三陸のサケや秋田のハタハタをはじめたとえ禁漁すべき状態だったとしても最後まで獲り尽くすような漁業が横行しています。


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