この期間はアメリカ、中国、欧州をはじめとするエマージング諸国の景気が絶好調で、だから輸出が伸びたのだという説もあるが、そうだとしても、円が80円を割るような状況になっていたら、せっかくの世界景気拡大の恩恵を受けることも難しかっただろう。
量的緩和が06年3月に終わった後も、GDPはしばらく伸びていたが、やがて横ばいになり、リーマンショックで一挙に落ち込んでしまう。これがリーマンショックのせいなのか、量的緩和を早期に解除した悪影響がラグをもって現れた結果なのか、一概には判断できない。私は合わせ技だと思っているが、安倍首相は、第1次安倍内閣での生産の停滞は量的緩和の早期解除にあると考えており、だからこそ今回の第2次安倍内閣では、大胆な金融緩和を唱えたのだと言われている。
要するに、量的緩和が行われていた時期には、財政政策に因らず、金融緩和政策だけで景気が刺激され、金融引締め政策とリーマンショックで景気が悪化したということである。
財政政策と金融政策の両方を行う安倍内閣
では、現在の安倍内閣の下での大胆な金融緩和の効果はどうだろうか。図2は、第2次安倍政権でのマネタリーベースやGDPなどを示したものである。始まってまだ1年あまりしか経っていないので十分なデータはないが、安倍首相の大胆な金融緩和の方針と黒田東彦日本銀行総裁の量的質的金融緩和政策の実行によって、実質GDPが拡大しているのが分かる。
もちろんこれには、公共事業で支えているからGDPが拡大しているのであって、金融緩和の効果ではないという反論がある。確かに、今回安倍首相が政権に就く前の12年10~12月期から13年7~9月期(本稿執筆時の最新データ)まで、公共投資は3兆円、政府消費支出は1.5兆円増加している。この間、GDPは11.6兆円増えているから、公的支出がGDPの増加の39%を支えていたことになる。