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2014年3月5日

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勝川俊雄 (かつかわ・としお)

東京海洋大学准教授

1995年東京大学農学部水産学科卒。97年同大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2002年同大学大学院農学生命科学研究科博士号取得(論文博士)。三重大学生物資源学部准教授等を経て15年4月より現職。

 たとえば、北海道のニシンの場合も、資源が豊富だった時代には、毎年60万トン程度の水揚げがあった。当時は、ニシンが日本の漁獲量全体の1/3を占めていたのだ。1957年以降、ニシンは激減し、今日に至っている。北海道新聞は、「風蓮湖、ニシン豊漁に沸く 前年の4倍、稚魚放流の効果」と報じているが、ここでの豊漁は2000トンである。

図2 北海道でのニシン水揚げ推移
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海外は資源が豊富な時代を基準に

 海外では、資源が豊富な時代を基準にして、漁業の状態を判断する。ノルウェーなどの漁業先進国では、漁獲が無い時代の30-40%まで魚が減ったら、禁漁を含む厳しい規制をして、資源を回復させるのが一般的である。魚がどこまで減っても漁獲を継続し、資源が枯渇した状態を基準に、少しでも水揚げが増えたら「豊漁」とメディアが横並びで報道するのは日本ぐらいだろう。この報道姿勢からも、日本人が水産資源の持続性に対して、きわめて近視眼的な視野しかもっていないことが理解できる。

 先日、ある漁師から「林業は100年先を考えて木を植える。農業は来年のことを考えて種をまく。漁師はその日のことだけ考えて魚を獲る」という話を聞いた。同じ一次産業でも、生産現場をコントロールできる林業と農業は、長期的な視野を持っているが、自然の恵みを収穫するだけの漁業は、その日暮らしで、場当たり的に獲れるだけ魚を獲ってきたのである。

 ソナー(魚群探知機)を使って魚を根こそぎとってしまう現在のハイテク漁業は、海洋生態系に甚大なインパクトを与えている。我々は魚を減らすことができても、増やすことはできない。魚がひとたび減少すれば、自然に回復するのを、何十年もただ待つしか無いのである。生産現場を人為的にコントロールできないからこそ、水産資源の持続性に対して、より慎重になるべきなのだ。

 魚がどれほど減っても、まともな漁獲規制をせずに、目先の漁獲量の増減に一喜一憂しているのが、日本の現状である。これからも魚を食べ続けたいならば、水産資源の持続性に対して長期的な視野を持ち、十分な産卵親魚が確保できるまで、厳しい漁獲規制を行うべきだろう。


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