一時の話題で終わるのか?
アメリカが騒いでいる、アメリカの制裁を突破した、アメリカでダウンロード数が1位になった……。このように中国におけるディープシーク・ブームはアメリカ発と言える。
実際にディープシークを使って見てどうだったという話はごく少数だ。というのも、世界から見ると「中国のAIがこんなにすごいなんて」という驚きはあるかもしれないが、他の中国AIも優秀な製品ばかり。
ソフトウェアエンジニアなど最上級の性能が必要な人は、ネット検閲を回避してオープンAIの製品を使っているだろうが、ほとんどの中国人は中国製のAIで満足している。ディープシークと比べてもAIそのものにはさほど大きな性能差はない。
むしろディープシークに大喜びしているのはアナリストやジャーナリスト、ブロガーなど「資料を集めて分析する仕事」がある人だろう。ディープシークはウェブ検索して情報を集め、それをAIが整理、分析するという機能があるが、これが本当によく出来ている。
同様の機能を持つAIはいくつもあるが、ディープシークの性能はその中でもかなりのハイレベル。また、筆者自身が使った印象として、米国のAIは中国語情報をあまり検索してくれないので、その意味では特に便利だ。

一般的なウェブ検索での中国語情報検索はかなり効率が悪い。違法な転載サイトが多いためか、検索しても公式サイトなどの信頼性ある情報が上位に表示されないことが多々ある。信頼性の高いレポートを作るのは一苦労なのだが、ディープシークに公式サイトを調べさせることでかなり手間が省ける。
ただし、世界的な注目を集めて以降はアクセスが集中しているため、動作が遅くなる、ウェブ検索機能が使えなくなっている時間帯が多く、これだったら別のAIを使うという流れになっている。中国AIの競争は激しく、人気のサービスはすぐに他社も導入する。もちろん若干の性能差はあるだろうが、快適に動くか、普段使っているサービスと統合しているかといった面を考えると、中国人にとってディープシークと同程度に便利なAIはいくつもある。
このように見ていくと、中国メディアとSNSでのディープシーク人気は一時の話題として消費されそうな気配を感じる。