2025年3月16日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月12日

 トランプ政権から、貿易黒字国(越の24年1~10月対米貿易黒字額は1020億ドル、国別世界3位)に対する圧力が増すことに対しては、第一次政権時の経験をも踏まえ、既にそれなりの準備をしていると思われる。例えば、ベトナム軍の武器調達は、従来60%以上がロシア製であったが、ウクライナ侵攻後はロシアからの調達が難しくなっており、米国製武器の輸入が見込まれる。米国製民間航空機や天然ガスの輸入もありうる。

米中対立先鋭化でどう動くか

 南シナ海に関しては、2013年以降、中国がベトナムから武力で奪った6環礁を含めた7環礁を造成・軍事拠点化し、海軍や海警局の活動を活発化させている。中国は、彼らの主張を否定した 16 年の仲裁裁判所判決を「紙くず」と呼んで無視し、フィリピンとの対立を先鋭化させている。

 最近、中国に対抗するためベトナムも軍事拠点化を進めていると報じられている。ベトナムは「南シナ海の安全と自由航行」を守るためには、米国との協力強化が不可欠と認識している。

 米中対立が先鋭化した時にベトナムの「立ち位置」がどうなるかは、米中両国にとっても大きな関心事であろうが、ベトナムの「主権」や「国民の生命」に甚大な影響が及びうる事態になれば、ベトナムは「4つのNO」を放棄し、立ち上がると思われる。中国は、その点をよく理解しており、この2~3年、ベトナムの「取り込み」に相当のエネルギーを割くとともに、南シナ海ではベトナムを刺激しないように、対越行動を自重している。

 確かに、論説が指摘する通り、米国のベトナムとの協力には限界があることは間違いではないのだろう。しかし、米国は豪州、日、韓のような地域のパートナーと協力し、麻薬対策や人身売買対策などの問題に関して、能力開発、訓練、その他の支援を提供する、といった工夫をすることはできる。

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