2025年3月16日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月12日

 習近平の国家安全保障上の最優先課題は、「中国共産党支配の維持」である。米国は、ベトナムの指導者も同様の政治的安全を志向していることを受け入れなければならない。「社会の安定と民族団結」を維持するために、中国はベトナムの警察、治安、諜報機関と協力している。

 米国防総省は越国防省と協力し、「地域の平和と繁栄」というビジョンを掲げ、海上での中国への対抗に焦点を当てている。その一方、ベトナムの国内治安当局は、米国発の自由主義の影響等に対抗するため、中国と緊密な関係を築いてきた。

 ベトナムの基本的な治安原則は、「反人権と民主主義」を掲げる中国とよく似ている。現在、中国との協力は、「インテリジェンス共有」、「反内政干渉」、「反分離主義」、反体制勢力による『和平演変』、『カラー革命』防止のための協力強化に重点を置いている。

 また、多様な非伝統的安全保障ニーズ(サイバー犯罪や国際的人身売買、麻薬)について、ベトナムは、米中両方と協力している。

 ベトナムは、米中両国と治安問題で緊密に協力することを選択した。これは、中国が他国にアピールするのは経済的なものだけだという従来の常識を覆す。中国は米国が真似できない援助(権威主義体制の手助け)を提供しているため、米国は限界を認識しなければならない。

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トランプ政権下での貿易は

 この論説が指摘する通り、ベトナムの対米協力の目的(中国の覇権阻止)と対中協力の目的(体制維持)には大きな違いがあり、ベトナムは双方を必要としている。この二つの目的を達成するため、ベトナムは対外政策では、「バンブー外交」および「4つのNO政策」(軍事同盟を結ばない、他国と対立しない、外国の基地を持たない、武力による威嚇や武力の行使をしない)を駆使して、米中両国との関係緊密化に成果を上げてきている。ベトナム外交は非常にしたたかである。

 今年、米越両国は国交樹立30年周年、ベトナム戦争終結50周年を迎えることから、両国首脳レベルの要人往来が期待される。


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