その後の混乱は予想されたが、ルビオ国務長官は4日も経たないうちに譲歩しなければならなくなり、「人命に関わる人道支援」についての広範な除外を発表したが、その意味は明確ではない。
混乱が生じた理由の説明はいくつかあろう。1つは、意図的ではなかったということだ。ルビオが部下として熱意を示したかったのかもしれない。トランプの大統領令は、「開発援助の新たな義務と支出」を一時停止するよう指示したものだが、ルビオはさらに踏み込み、経済開発だけでなく人道支援や安全保障プロジェクトを含む進行中のプログラムも停止した。
イデオロギーにも責任があるかもしれない。政権は「覚醒した(woke)」思想を根絶し、ディープ・ステートを潰すためにショックと恐怖を使っている。おそらく、アメリカ・ファーストとは世界のことは二の次であることを示したいのだろう。
そしてトランプは混乱の爆発を喜んでいるのだろう。無秩序な世界では強者が勝ち、米国より強い国は無い。
本当の説明は、おそらくこれらすべての要素がミックスされたものだろう。その結果、不規則で無慈悲な政策立案につながる。国内で移民を悪者扱いするのと同様に、海外で残酷な行為をすること自体が目的になっているのかもしれない。
アメリカ・ファーストに遅れて改宗したルビオは、アメリカ・ファーストが外交政策を形成することを望んでいる。ルビオは、米国が作った秩序を外国が乱用し、「米国の利益を犠牲にして自国の利益を図ってきた」と言う。そして、支出されるドルはすべて、米国をより安全に、より強く、より豊かにするものでなければならないと主張する。
しかし、ジハード主義者が大量発生するリスクを冒すことは、米国の安全を低下させ、悲惨な事態を引き起こすことは、友人や潜在的同盟国を遠ざけ、米国を弱体化させる。そして世界が貧しくなれば、結果的に米国も貧しくなる。
米国の寛大さは単なる慈善事業ではなく、より安定した、より豊かな世界を作るための対外援助は、米国の最大の利益である。それをアメリカ・ファーストと呼んでも良いくらいだ。
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断行されたUSAIDの解体
トランプが次々と口走る様々な政策が米国のソフトパワーを弱体化させているとの指摘はその通りであるが、その中でも政策が具体化しその実害がはっきりしているのが、1月20日にトランプにより打ち出された対外援助の90日の停止措置とその後の米国国際開発庁(USAID)解体の動きであろう。
この社説に指摘されている通り国務省は、トランプの大統領令に基づき、1月24日、進行中のものを含め全ての援助活動を停止するよう指示をしたことがリークされ、強い批判を受けて、当初、緊急食糧支援とエジプト、イスラエルへの軍事資金援助だけが適用除外とされていたものを、28日にルビオ国務長官は適用除外措置を人命にかかわる人道援助に拡大した。