2025年3月26日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月7日

 フィナンシャル・タイムズ紙のエドワード・ルースが、トランプ大統領の自由奔放な行動に掣肘(せいちゅう)を加えるものは、議会にしろ、最高裁にしろ、あるいはメディアにしろ、もはや存在しないように見えるとして、その危険性を警告する論説‘The field is now wide open to Trump’を書いている。要旨は次の通り。

(lucky-photographer/wildpixel/gettyimages)

 「一期目には誰もが自分に歯向かった。だが二期目は誰もが自分の友達になりたがっている」とクリスマスの前にトランプは言った。その通りだ。

 民主党は混乱をきたしている。2017年にはナンシー・ペロシという何十年来の強力な指導者がいた。彼女はトランプを二度にわたり弾劾し、民主党を鉄のグリップで掌握していた。今回、民主党は戦略を欠いている。操舵手を欠いた民主党はトランプの海を漂流する。

 共和党も歯止めとして機能する訳ではない。トランプに対して最後に最も効果的な障害を成したのはアリゾナの故ジョン・マケイン上院議員だった。当時はトランプに立ち向かう気概のあるかなりの数の上院議員がいた。

 2021年初めにトランプに有罪票を投じた7人のうち、ミット・ロムニーら4人は、もはやいない。残ったリサ・マコウスキー、スーザン・コリンズ、ビル・キャシディの3人では共和党の多数を覆せない。

 今日の最高裁はローブをまとったMAGAのようである。17年の最高裁は5対4で保守派多数だった。しかし、そのうちの一人である共和党指名のアンソニー・ケネディはしばしばリベラル派に味方する傾向があった。今日では、最高裁は6対3の多数で狂暴な行政府に対する歯止めであるよりはゴム印のようである。

 トランプは既に戦いを挑んでいる。TikTokについて、彼は議会で超党派の支持で可決された禁止法案を無視している。

 トランプの反抗は第7代大統領アンドリュー・ジャクソンを想起させる。最高裁がチェロキー族の土地の奪取を禁じたのを受けて、ジャクソンは「彼(最高裁長官)にそれを執行させるな」と言ったとされている。ジャクソンは勝った。

 トランプは既にジャクソン流の勝負に出ている。憲法修正14条は米国で生まれた者には誰であれ自動的に市民権を与えているが、彼は1月20日の大統領令の一つでこの規定を強引に無視した。


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