2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月20日

 貧しい抑圧的な母国に強制送還されるベネズエラ難民も涙を流すのは間違いない。ルビオ自身、上院議員だった22年に、ベネズエラ人の国外追放は「死刑宣告」に等しいと書簡で言っている。そしてトランプも第一期政権の時は、ベネズエラの「破滅的状況」を理由にベネズエラ人の国外追放を猶予している。

 しかし第二期では、国土安全保障省は60万の在米ベネズエラ難民の一時保護の地位を取り消し始めており、彼らは国外追放の危険にさらされることになる。これは難民に避難所を与えるという米国の国家的アイデンティティーへの裏切りだ。

 結局、恩恵を受けることになるのは恐らく中国で、クリス・マーフィー上院議員が警告するように、中国は米国の対外援助の終焉で生じる「空洞を埋めることになろう」。また、トランプが勝手気ままに同盟国に関税を課しつつある今、中国はその弱い者いじめの行動にも関わらず、世界の多くの国にとって貿易相手国としても、さらに米国への対抗勢力としても魅力を増すことになろう。

 米国を再び強国にするどころか、こうしたソフトパワーの崩壊は今後何年も米国の経済安全保障と国家安全保障を弱体化させることになるだろう。

* * *

「効率化」で失ったイメージ

 このMax Bootの論説に賛成する人は米国の内外においてかなり多いと考えられる。トランプ政権が第2期の2週間で米国のソフトパワーに甚大な損害を与えたとの指摘はその通りである。

 特に途上国との関係でUSAIDを閉鎖しようとする動きは米国の支援で生き延びてきた多くの途上国の人々を更なる苦境に追い込むことになり、大きな災禍をもたらすことは明らかである。その状況がマスメディアで報じられ始めているが、米国のイメージは大きく損なわれる結果を招くだろう。

 イーロン・マスクの政府効率化省が、この政策の背後にあるのかと思われるが、これで節約できる歳出と寛大な米国のイメージの喪失を比較すれば、愚かな政策と言わざるを得ない。イメージの問題はお金に換算されにくいが、トランプにもマスクにもお金に換算されえない損害を勘定する能力がないのだろう。


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