安全保障分野で言えば、トランプにとって、32カ国によるNATOは居心地の悪い機構であろう。自らの防衛コミットメントは多様な国、広大な地域に及んでいる一方、自らの意向の反映は容易ではない。
NATOに比較するならば、二国間の枠組みである日米安保体制の方がトランプにとっては違和感が少ない。相手は一国であるので、意思疎通もディールもしやすい。
クアッドや日米韓の枠組みには前向き
2月8日、石破茂首相とトランプ大統領との間で日米首脳会談が行われた。トランプのNATOに対する厳しい姿勢もあり、トランプが同盟関係をどう見ているのかについて不安視されていたが、日米同盟について共同声明で「インド太平洋及びそれを超えた地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続ける」と前向きの評価がなされたことは、ひとまず良かった。
「主権主義者」としてのトランプの主張がどこまで進んでいくのか懸念が持たれていたが、石破・トランプ会談では、共同声明において、二国間の枠組みである日米同盟や、日米豪印『Quad(クアッド)』、日米韓、日米豪、日米比といったミニラテラルな枠組みについては前向きの評価がなされ、その限りにおいては、他国との協力や協調の意義を認める形となった。
他方、前回2024年4月の岸田・バイデン共同声明で触れられていた国連、NATOなど多数国間の枠組みへの言及は、今回の石破・トランプ共同声明からは一切落ちている。ちなみに、ロシア・ウクライナ戦争、ガザ紛争といった、今後、紆余曲折が予想されるグローバルな課題も触れられていない。

