クロマグロの例を見習え
資源評価には常に不確実性がつきまとう。水の中に棲息する魚についてはなおさらである。温暖化に伴い近年海洋環境が大きく変わりゆく中、不確実性はさらに高まってゆくとも言えよう。
現在水産予算のなかで資源評価に直接関連する予算は数十億円に過ぎず、人員も足りていない。このため時に資源評価が大きくぶれることがある。
科学的知見が不確実な場合に関しては「予防的アプローチ」の適用が世界で一般的な基準となっている。国連食糧農業機関(FAO)「責任ある漁業のための行動規範」および国連公海漁業協定では、水産資源の保全管理に関して予防的アプローチの適用と、十分な科学的知見の欠如を保全管理措置実施の採用の延期または不履行の理由としてはならないことを求めている。
また公海漁業協定では、情報が不確実、不正確な場合には一層の注意を払うべきとしている(行動規範7.5.1及び公海漁業協定第6条2項)。科学的不確実性に備え、常に控えめな漁獲枠設定を行うべきなのである。
厳格な管理導入の結果、急速な資源回復が図られた例として、太平洋クロマグロが挙げられる。かつて初期資源量比4%以下にまで資源量が落ち込んだこのマグロは、10年代後半に国際的な管理の下で数量管理に基づく厳しい回復措置が図られた。
クロマグロがいるのに捕れない、せっかくかかったのにリリースしなければならない、クロマグロ漁業者は負担を強いられた。しかしその結果は、以下の図の通りである。
太平洋クロマグロが急速に資源回復を図っていることは、日本各地の漁業者自身が目撃している。スケトウダラも、是非クロマグロの成功例に続き、資源復活のシンボルとなるべきである。そのために必要なのは、科学的不確実性を視野に入れ、十分資源保護的な漁獲枠の設定を通じた資源管理であるように思われる。